チワワボーイ

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 終電もなくなった地元の駅前で、蘭丸は縁石に腰掛けてぼんやりとしていた。憧れだった南との再会を果たしたにも関わらず、ため息ばかりが溢れる。  ——俺達、多分、解散するかもしれないです  それを伝えるチャンスは何度もあったはずなのに、どうしても喉の奥で突っかかってしまった。「また連絡するわ!」と悪ガキのような笑顔に刃向かえないのは昔から変わらない。  思えばグッバイトニーとの出会いがなければ、こんなにも音楽にのめり込む事はなかった。軽音部で出会った仲間で結成したチワワボーイ。校内で確固たる地位を築いたものの、どこか物足りなさを感じていたある日、「ライブとは何か、本物のロックとは何か」を知りたくて、颯斗の提案でライブハウス『マーカス』に乗り込んだ。  その時、衝撃を受けたバンドが南耀二郎率いるグッバイトニーだった。あんなバンドになりたいという衝動から軽音部の『校外演奏禁止』の掟を破ってまでライブハウスでの活動を始めた。
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