チワワボーイ

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 初ライブの時、声をかけてくれたのがグッバイトニーだった。その後も何度も対バンに誘ってくれて可愛がってくれたのもグッバイトニーだった。  そして解散ライブも名だたるバンドがいるにも関わらず、オープニングアクトを任せてくれて、最高のライブを経験させてくれたのもグッバイトニーだった。  そんな恩人を前に「俺達、解散するんでライブはできません」なんて死んでも言えなかった。いや、言いたくなかった。チワワボーイは解散していない。休止宣言すらしていない。中途半端に宙ぶらりんのまま、何もせず半年という時間をただ過ごしていただけ。  ライブするぞ、蘭丸——。その言葉がまだ脳を痺れさせている。五年ぶりに復活を決めたバンド、一方で何もせず自然消滅に向かっているバンド。  ——俺はまだ何もしていないんじゃないのか?  そう頭を抱えていた時、スマホが音を立てた。表示された名前に驚き慌てて耳を当てる。 「おい! 聞いたか! グッバイトニー復活するってよ!」  ボリュームの壊れたような大声で興奮気味に話すのはタキだった。
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