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「モカ、いつまで荷物を見ているの?」
「弥生っ……ッ!」
「そういえば、僕がお泊まりの買い物を一緒にしようって言った時、モカはあまり乗り気じゃなかったよね? 持ち合わせの物で充分だ。とか言ってさ。それなのに今になって荷物を気にするなんておかしいよ」
「それは……ッ!」
「ねぇ、モカ。こっち向いて。僕のほうを向いて」
「~~~ッ!!」
「向いてくれないと、このままキスより先の事しちゃうよ? 進めちゃうよ?」
弥生の手が糢袈の衣服の中に入り込み、糢袈の背中や脇腹などを艶かしい手の動きで弄ります。
それに合わせて、糢袈のベルトが外される金具音が静寂しきった部屋中に響き渡ります。
「弥生! 待っ……ッ!」
「なぁーんてね。冗談。モカがあまりにも可愛いから、ちょっと意地悪しちゃった。ごめんね」
そう言って、弥生は直ぐに糢袈から離れました。
糢袈は安堵した反面、寂しくもなってしまい……。
「弥生……」
「ん? 何?」
糢袈に名前を呼ばれたその容顔美麗な人物は太陽のような笑顔をしております。
太陽よりも明るく輝いている弥生の笑顔を見ても、糢袈は少しも笑えません。
どんなに笑顔を振り撒いていても、本当は無理して笑顔でいるのではないのかと、弥生の心の中はドシャ降りなんじゃないかと糢袈は不安にもなってしまい……。
「弥生……」
「ん?」
弥生から聞き返されても、糢袈は深刻な表情をして黙っているだけです。
「何? モカ」
「…… 一緒に温泉入ろうな」
「うん。ありがとう、モカ」
この一泊旅行で何か進展がありそうなこの二人。
この先行きを知っているのは、未来の弥生と糢袈だけなのです。
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