推しの結婚

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「やだ、やだ、やだ」  子供のように同じ言葉を繰り返す私に、握りしめた割れたスマホのケースの中のチェキが微笑む。強く握りしめれば、赤い雫が手を伝う。  嫌だ。こんなの、受け入れたくない。ねぇ。推し。帰ってくるよね。別のアイドルグループに入るのかな? それともドッキリかな?   ねぇ。ねぇ。ねぇ。嘘なんでしょ? 嘘って言ってよ!!!!!!! ねえ!? あんなにも踊るのも歌うのも、みんなのことも好きって言ったよね!? 信じてたんだよ!?   ねえ。ねえ! ねえってば!!!!!!! お願いだから、こんな意地悪な嘘は、もうやめて。 「っ、く、うう」  言葉になれない嗚咽が漏れる。私の中の推しは、今もまだ、初めて見た舞台の衣装で私の中で笑っていた。  すると、スマホから通知音が鳴った。  推しが、配信でさよならを告げるのだという、報告のSNS更新だった。
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