推しの結婚

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 見たくない。見たい。見なきゃ。見ちゃだめ。終わりを、受け入れたくなんかない。だから。もう、推しを嫌いになってしまえればいいのかもしれない。そうすれば、この感情ともさよならできる。  そう思って推しのチェキにハサミを突きつける。でも。  プルプルと震える手。何十分ん立っただろう。私はため息をついてしゃがみ込んだ。 「無理、できない」  私にいろんなものをくれた推しを、切り刻無ことは、推しとの今までの思い出を否定するようなものだ。そう。否定できれば楽になる。分かってる。でも。無理。  私の推しは、やっぱり私の永遠のお姫様だ。  推しのイメージカラーのコップに、推しの好きな飲み物を注いで、深呼吸をする。推しは、今日できっと配信をやめる気だろう。推しは意志の硬い女の子だ。きっと舞い戻ることもない。  分かってる。だってそんな推しが大好きだから。だった、ではなく、現在進行形で大好きだから。そんな愛しい推しだから、私はずっと推してきた。
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