推しの結婚

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 推しの代わりはいない。きっと私は抜け殻のようになるのかもしれない。  穴を埋めるものを探しては、同じものはないと嘆くのかもしれない。  それでも。推しと過ごした幸せな時間が消えることはない。  もうきっと二度と推しには会えない。  偶然すれ違うことができても、もう推しは一般人だから、声をかけることもできないだろう。それでもいい。それでいいのだ。推しはひとりの人間で、わたしもひとりの人間で。  一瞬でも濃厚に混じり合った時間が、この世界に確実にあったのだから。それを死ぬまで大切に覚えていたい。  有難う、推し。最後の配信は笑顔で、見届けるよ。そして、今までのお礼を伝えるから。どうか、幸せでいて。 「私も、通信芸大の資料で取り寄せてみようかな」  そう呟きながら、私は涙を拭った。  推しが、くれた勇気を、私は永遠に忘れないから。  ありがとう。この世に生まれてくれて。尊い尊い私の推し。  どうか、世界で一番幸せな女の子として、生きて。  ずっとみんなが憧れた、みんなの推しなんだから。  ファンのみんなが貴女になりたかった。貴女と付き合いたいと夢見た。貴女を尊敬した。だから。胸を張って。  私も、推しの思い出を糧に頑張るから。   推しに、恥じないような人生を目指すから。  だから。    私は、これからも、世界で一番大切な推しと共に生きて行きます。
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