推しの結婚

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 彼女は美大卒の、少しアングラな絵を描くダンサーで舞台女優だった。  とても美しい顔立ちで、猫を被ればすぐに人気爆発しそうなルックス。それなのに、社交辞令が苦手で、すぐ態度に出る人間らしさに惹かれて、私は空き時間に合えば彼女に会いに行くようになった。 「こんにちは、来てくれてありがとう」  そう、配信で自分に向かって言ってもらうたびに、自分の口角が上がるのがわかった。埋まらない何かが少しずつ塞がっていく感覚を感じた。  私は、彼女の中で生きている。  こんなにも魅力的で、可愛い女の子の、人生の中で生きているのだと、そう思うだけでどこか特別な自分になれた気がした。
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