推しの結婚

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 私は小中高と、上手く人の輪に入りきれない女の子だった。もともと生まれつき、コミュニケーション能力に難があった上に、自信がなかった。  自分がこの世にいていいのか日々疑問に思っては、縋るように絵を描いて。それを褒められることが存在価値の一つだったのに、今じゃ妹は全国ネットの絵描き団体に所属している。小さな頃、妹に絵を教えなかればよかったと、心底思ってももう遅くて。出来損ないの私と、要領のいい妹じゃ、戦うだけ無駄なことを悟り筆を折った。  その時私の可能性の翼も、一緒に折れたのを感じた。それでもよかった。推しが、羽ばたいてくれれば。私の代わりに彼女が世界に飛び立てばいい。世界に届け、推しの笑顔。そう思いながら、私は社会人になり、仕事をこなし、夫婦喧嘩の飛び交う家で生活した。
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