掘った芋いじるな

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 海にお船を浮かべてね  行ってみたいな 他所の国  昔、高知藩土佐の国に坂本龍馬という、訳は分からないが偉く人に好かれる若者がいた。  当時日本は徳川幕府という政府が他国との交際を禁じて、長崎という所だけで限られた付き合いをしていた。  そこへ突然メリケンのペルリと言うのが、煙を吐く大きな舟を何艘も引き連れていきなり江戸向けてやって来た。  その舟はでっかい大砲を持っていて脅しにぶっ放したものだから、幕府の人間は肝を潰すやら腰を抜かすやら大騒動になった。  日本中大騒ぎである。  血の気の多い奴の中からは、 「侵略者じゃあ、ぶった斬っちゃれ。」  とダンビラ振り回す奴が出て来る始末だ。  龍馬が刀を振り回したという話はあまり聞かないが、若者の常として新しいものが好きだったらしい。  外国とはどんな所か、知りたいものだと思ったようだ。  丁度その頃、メリケン帰りのジョン万次郎という人物が滞在していた。  龍馬はすぐに会いに行った。 「龍馬。おまん、ジョン万ゆう人の所へ通いゆうらしいけど、なんぞ面白い話有ったかよ?」  友人の中岡慎太郎にたまたま出くわした時に聞かれた。 「おお慎の字、面白いかどうか分からんけんど、一つ言葉を覚えた。」 「ほーお、どんな言葉じゃ。」 「『掘った芋いじるな』という言葉じゃ。」 「掘った芋いじるな? なんぜよそりゃ?」 「メリケン方言で、『今、何刻(なんどき)じゃ?』ゆう事らしい。」 「異国のもんはミョーな事、言うもんじゃなあ。」  龍馬の話に慎太郎がそう言ったとか、言わなかったとか・・・・・・知らんけど。
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