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そう囁いた涙君は私ににじり寄って来て、抱きつかれる。身を捩ろうとしたら、呆気もなく身体が離れ、彼は私の上に倒れ込むとそのまま動かなくなってしまった。
やがて耳元でスースーと寝息が聞こえてきた。
寝ちゃった…。
二回もキスされた上に、変な事を囁かれて、勝手に寝られて。
これは何?何の罰?
さっぱりわからない。
私は彼に見られてないのをいいことにゴシゴシと唇を肘で拭った。少しサワーの酸味の残るキスがふたつ。さっぱりわかんないから、こんなこと。苛立って彼の身体を持ち上げようとしたけど、ビクともしなくて、ウーンと呻いた。
「あー、やっぱり襲われたか」
いつの間にか律が突っ立っている。
「どういうこと?ちゃんと説明して」
「シッ、起きるだろ。とりあえずソファに寝かせてから話す。手伝って」
律は涙君を後ろから持ち上げる。私は足の方を持って二人でヨイショと抱き上げて、ソファに横たわらせた。離れようとしたら涙君がううんと唸って、カーディガンの裾がギュッと掴まれた。見ると涙君は穏やかに微笑しながら寝息を立てている。
子供の様に邪気の無い寝顔。相反するさっきキスして来た時の強引。あれを感じさせるような様子はどこにもない。まるで別人みたい。
「お酒呑むと誰彼構わずキスしたくなるらしい」
「……何それ」
「知り合ったバーで酒奢ってやったら、俺もやられたよ」
「え?!」
律はやけに意味ありげな笑みを浮かべた。
「まあ、悪い奴じゃないから、暫く置いてやってよ」
しれっと言うと律は胡座を掻いて残っていたサワーを喉に流し込んで、私を見た。
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