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ブーケの種類はいくつかある。その中でも比較的簡単そうな、クラッチブーケというのを二人は選んだ。土台や小道具を使わずに、ただありのままの花を束ねていく作り方だ。
「クラッチっていうのは、ぎゅっと握るっていう意味なのよ。花嫁の気持ちを表しているみたいで、素敵でしょ?」
そう言って目をキラキラと輝かせたのは、二人に教えることになった店員の、春菜という女性だった。
二人と年齢も近く、明るい性格の春菜とは、すぐに友だちのように親しくなれた。
しかし、クラッチブーケは、二人が想像していたより、はるかに奥が深かった。
ただ花を束ねれば良い、というものではない。
まずは花選びの段階でつまずいた。
それぞれ別の日に受ける個別レッスンのため、相手に似合いそうな花を想像するしかない。加えて、ドレスとの相性や、今のトレンドというものもある。
そこに、相手の好みを織り交ぜる。
花を束ねる前から、プロとアマチュアの違いを痛感した。
お互いのことを深く知っていたはずが、思い通りにいかない。
気を利かした店員の春菜が、それとなく出してくるヒントを元に、なんとか頭を捻る。
プロが束ねているのは、花だけではなかったことを知る。
その様子に、春菜は「完璧を求めすぎだよ」とやさしいアドバイスを送る。
結局二人は、それぞれ最初のレッスンを花選びだけで終えてしまった。
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