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「美咲、俺は延期もいいと思うけど……」
美咲は新郎になるパートナーの言葉に、ゆっくりと首を振った。「もう、いいのよ」と笑みを浮かべる。
どういうわけか、美咲の選んだ相手は環奈と同じように、どこか頼りない。
悩んだりへこんだりすることも多い人だ。
しかしそれを励ますたびに、笑顔を返してくれる。
そこに、どうしようもないくらいの、幸せを感じる。
たまらなく、愛おしい。
「おめでとうございます!」
春菜がブーケを持ってきた。
美咲は一瞬目を丸くしたが、すぐにその表情は穏やかになった。
美咲の使った花と同じ花を束ねてあるが、なんとも歪な形をしている。
よく見れば、スターチスを囲むかすみ草は、たくさんの小さな白い花たちが、カチカチに固まっている。
これは、枯れている──。
しかし美咲は、奮闘し、何度も作り直す環奈の姿を思い浮かべていた。
歪なブーケは、努力の跡を伝えようとしているようにも見えていた。
「本当に仲いいよね。同じ花を選ぶなんて」
「そう。昔からね、いつも一緒で。あ、そうだ。環奈は?」
「美咲ちゃんのブーケ、ぎゅっと握り締めて、歩いてたよ」
春菜はそう言って、手紙を差し出した。
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