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手紙を開くと、相変わらずの丸い字が、環奈の声となって聞こえてくるようだった。
お祝いの言葉と一緒に添えられた文字の端々には、時々ハートマークや星が書いてある。
何年経っても変わらない幼馴染の言葉に、美咲の胸は軽くなっていった。
平気なフリをしてはいたけれど、やはりそれなりに結婚式を挙げられないことは、ショックだった。
隣で、これから生涯をともにするパートナーが、気を遣ってくれている。
心配をかけてはいけない。
私はいつもそうしてきた。
そうしなくてはならない──。
今回も、環奈には内緒にしてきたはずだ。
それなのに、なぜこんなことが書いてあるのだろう──。
手紙の最後に、『末永く、お幸せに!』と書いてある。
しかし、その下には、小さな字で続きが書いてある。
『美咲ちゃん。これは、ドライフラワーだよ。ずっと飾っておけるから、いつか、また使う日があれば、その時は……フフフ。 環奈より』
──まったく、もう諦めたっていうのに。
話には聞いていた。スターチスとかすみ草は、ドライフラワーとしても人気らしい。これは、おそらく花屋の天井に吊るしてあった、ドライフラワーだ。
フッと笑うと、せっかくのマスカラが溶けていく。
このまま下を向いていたら、大事な手紙の文字が涙で滲む。
美咲は顔を上げた。
帰ろうとする春菜に、声をかける。
「これ……来年も使えるかな?」
春菜は「もちろん!」と言って微笑んだ。
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