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☆
“私、結婚させられる――”
リョウにそのことを話した。
お見合いの場に登場して、華々しく私を連れ出してくれる、なんてドラマのような展開も期待した。
だけど彼の態度は素っ気ないものだった。
“あ、そう。で?”
で? と言われて何も言えなかった。
まだ大学生のリョウにとっては私と結婚なんて考えられない、という訳じゃない。
そもそも彼の夢は絵描きになることで、私との未来は何も考えていなかったみたいだ。
芸術家肌の彼にとっては、結婚という筋書きが人生のなかにはなかったらしい。
“だけどそれで、俺と杏奈とのつきあいは変わるものなの?”
そういう考え方もあるのだと、私は少し驚いた。
妙な説得力を持つリョウに流されるまま、結婚後もずるずると関係は続いている。
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