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☆
嫌なことは立て続けに起こるもの。
誰かがそう言っていた。
私はふらつきながらも、何とか自分のマンションへ戻り、部屋の鍵を震える手で何とか開けた。
中へ入ろうとした途端、すみません、と声をかけられた。
「昼間不在票入れたんですけど、夜間ならいらっしゃると思って再度来てみました。書留です。ハンコもらえますか?」
見れば郵便屋さんだった。
「ああ……はい。今持ってきます……」
ハンコは俊一さんの書斎にある。
私はお邪魔し、彼のマホガニーのデスク。右端の一番上の取っ手を開けようとした。
部屋の中に香る、俊一さんの香りにくらっとしてしまい、誤って真ん中の引き出しを開けてしまった。
また私はそこで目を見張るものを視界に入れてしまう。
「……婚姻、届……?」
それは白地に緑のラインが印字されているものだった。
枠内には、遠野俊一、数野杏奈、とふたりの署名捺印がされている。
なんで、ここに?
出勤ついでに、出してくれるって言ってたはずのもの。
また私のなかに、黒い嫌な染みがじわじわと広がっていく。
彼の残り香のする部屋のなかで、私はへたり込んでしまった。
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