第1話

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第1話

「あなたは、運命の出会いを信じますか?」 ある、占いの館にはいり、占い師にこういわれた。 「近くにいますよ。近いうちに会えるはずです。」 「ほんまに?それってそれって、」 この人ですか? と、写真を見せたくなったけど・・・・ こういうのって、じぶんでなんとかしやなあかんもんやんな。 そう、言い聞かせて。 「ありがとうございます。がんばります」 そう言って、占いの館を出てきた。 「やった!兄ちゃんに、告白されるんかも。それとも、うちが、告白したら、うまくいくようになるんかな❤️」 うちの名前は、小山みと。 「みと、どうだったの?」 「うん、あのね!」 「みと、嬉しそうだね」 一緒にいるのは、親友の、戸川留美。 「そう?そうかな」 うちの、憧れの人・・・好きな人は、従兄弟の兄ちゃん。 小さい頃、よく遊んでくれたにいちゃんは、うちにとっては、憧れの人で、初恋の人やった。 で、その憧れの、従兄弟の兄ちゃんは、いまや、人気アイドル「SAMURAI」の一員、森山幸助だ。 彼を、男の人と意識したんは、彼がグループに入ってからや。 「自慢の兄ちゃんや」 「みと?」 「留美、うち、兄ちゃんに告白されるんかもしれやん。そうなったら、カメラマンの夢ますます諦められやん!」 「みとったら、そんなことになったら、彼は、仕事やりにくいんじゃない?いまでも、みとは、ファンレター渡してくれって頼まれるんでしょ?」 「そうなんやけど~」 「でも、占い当たるといいね!幸助から、告白されるかは、ともかく、運命の出会いをするんでしょ?」 「いや!絶対告白されるんやもん」 そう、決めつけていた。すごく、期待していた。 兄ちゃんから、話があるって呼び出されて、浮かれまくるうちやった。 兄ちゃんのファンに知られたらきっと、きっとなにされるかわからんレベルやけど。 「みと・・・・・」 「・・・はい!」 「・・みと、俺のこと好きなのか?」 「・・・好きや。ファンとか、兄ちゃんだからとか、関係なくちゃんと、男子として好きや!」 「・・・・・ごめん。俺、みとの気持ちに答えられないや。」 「・・・・・それって・・・・・」 「・・・俺、好きな女いるから」 そうだった。 兄ちゃんは、ずっとずっと思ってる人いたんやった。 でも、それって・・・・・ 「やっぱり、ちがったんや。」 「・・・やっぱりってなんだよ。」 「・・・兄ちゃんの好きな人って、千里さんやろ?」 「・・・・・なんで、知ってるんだよ。たしかに、前までは妹の千紗が好きだった。でもな、俺がいま好きなのは、姉の千里の方だ。」 「・・・・」 「だから、お前の気持ちに答えられない。・・まぁ、いまは、片想いに近いけどな」 「・・・片思い?まだ、好きっていってないんか?」 「・・・・って、なんでこんなことみとに話してんだろ。」 なんか照れてる兄ちゃんが、可愛らしかった。 「・・・兄ちゃんの恋、うまくいくとええな。」 「・・・えっ?」 「本当は、期待していたんやけど・・・・・でも、兄ちゃんの好きな人が、千里さんでよかった。」 「・・・なんだよそれ」 うちは、この前、千里さんに会ったと、いうことは、内緒にしておこう。 「・・・うちな、占い師に、「運命の人に出会える」って言われたんや。だから、兄ちゃんに告白されるって思い込んでて・・・・」 「・・・運命の人に出会うんなら、それは違うじゃねーの?」 「・・・うん。いま、わかった。兄ちゃんは、兄ちゃんや。うちの自慢の兄ちゃんのままなんやなって。」 「・・・自慢は、言い過ぎだよ」 「・・・けど、諦めやん。うちは、信じることにするわ。だから、兄ちゃん、千里さんと、幸せにな」 「・・・あぁ、ありがと」 「・・・じゃ、あんまり、長話してると、ファンが気づくから、行くわ!」 「・・わかった。じゃ、またな」 「・・・うん!」 うちは、明るく別れた。 そのあと、うちは、気分を一新するために、部屋の模様替えをすることにした。 「きっと、出会えるやんな?運命の人に。」 それから、1ヶ月ぐらいしたときやった。 「はぁ、なんでうちこんなに買い込んでしまったんやろ。」 この1ヶ月、いろいろレイアウトを、考えて部屋の模様替えをしてきた。 本を読んで、すきな色で揃えてみたりもした。 インテリアコーディネーターになった気分やった。 「次は、丸の内病院前~」 ピー 降りる停留所だったから、ボタンを押し、着いて降りるところだった。 「あっ!きみ!待って!!」 呼ばれたような気がしたけど、構わず降りた。 ドアがしまります。 「あっ!降ります!」 うちの、すぐあとに男の子がすぐ、降りてきた。 なぜだか、息が上がっている。 「きみ!まって!」 腕を掴まれた。 「あの?」 「荷物忘れてるよ?ほら」 その男の子は、荷物を見せてくれて・・・ 「えっ?あっ、すんません。あまりにも、多くて・・・・」 「よかったぁー!間に合って。車内は意外と混んでたし、、一番後ろからだったし。」 「あっ、ほんと、すみません。」 「重そうだね。何をそんなに買い込んだの?」 「新年過ぎてしもたけど、部屋の模様替え。」 「そうなんだ。心機一転ってやつ?」 「当たり。でも、うち、ほんまアホなことしたと思ってる。こんなに、買うてしまうやなんて。」 「・・・俺、降りるバス停ひとつ先なんだけど・・・・」 「・・・えっ?ええの?バス、もう発車するで?」 「・・・いいよ。ここからでも、近いし。それに、君の荷物すごく重そうでたくさんあるの気になってたし。」 「優しいんやな。こんなに荷物持ってる女子、ありえやんのに。」 「・・俺、藤木勇気。君は?」 「うちは、小山みと。」 「降りたついでだ。荷物もってあげるよ」 「えっ?ええの?彼女さんとか、いるんやないの?」 彼が、ちらっと、その方向を、みた気がする。 「誰か・・・いるん?」 「・・・いいんだ。たぶん、俺の気持ちに気づかない人だし」 「・・・・たぶん?」 これが、うちと、勇気君との出会い。 うちにとって、これがかけがえのない出会いになるなんて、このときは、思っていなかったんや。 10分ほどあるいて、うちが住んでる、マンションまできた。 「おおきに、勇気さん。」 「勇気さんだなんて、なんかいやだな。俺、これでも、二十歳なんだけど?」 「えっ?うそや。うちと、タメなん?」 「えっ?タメって。みとさんも、二十歳?」 「見えんやろ?子供っぽいって、よく言われるから・・・・。これでも、もうすぐ短大卒業するし。」 うちは、部屋を開けて、勇気君を部屋へいれた。 荷物運んでくれたお礼をしようと思っていたのに。 「・・・これ、ここでいい?」 なんと、荷物整理までつきあってくれた。 これ、未成年なら、訴えられてるかもしれやん。 知り合ったばかりやのに・・・ 「おおきに、勇気君。一個手前で降ろさせたあげく、片付けまで手伝ってもらって・・・・」 「・・部屋の模様替えなんて必要ないじゃん。十分きれいだし。女の子の部屋って気がする」 「・・・・新年やし、気分一新したくて・・・でも、なかなかじぶんが納得する部屋にならなくてな。ほんまは、ずっと落ち込んでいたんや。」 「・・・それって、失恋したってこと?」 「・・ 当たりや。なんでわかったん?」 「・・・・そういうの、なんとなくわかる。女の子は、髪を切るとか、ジンクスあるよな。だけど・・・・」 「・・・勇気君も、そんなことあるん?」 「・・・半分当たり。一個手前で降りたのは、みとさんに、荷物を手渡すだけじゃなかったよ。」 「・・・本当は、誰かいたから・・・・。」 さっき、目線で、追いかけていた人・・・・・。 後ろ姿しか見ていないけれど・・・・。 「・・本当はね、ちゃんとおいかけるつもりだった。」 「・・・ごめんな。うち、引き止めてしもたんやな?」 「・・・・いいんだよ。それより、もう、帰らなきゃ。」 「・・勇気君、大学生なんやな。その本重そう。なのに、荷物運んでくれて・・・・ほんと、優しい人・・・・」 「医者になろうと思ってさ」 「すごい!頭ええんやな!うちはな・・・カメラマン目指してるんや」 「・・・そっか、だから、写真・・・・ みとさんらしい・・・・」 「・・・うでは、まだまだなんやけど・・・・」 「・・・そんなことないよ」 「・・・あはは。おおきに。」 「それじゃ、お邪魔しました。」 「まって!勇気君。」 「えっ?」 「・・・これ、今日のお礼。すっかり、わすれるところやった。」 うちは、缶コーヒーを、渡した。 「・・たいしたことしてないに、ありがとう。」 「なんかね、勇気くんとは、これっきりじゃない気がするんだ」 「・・・じゃあさ、その時は、声かけてよ。知り合った仲だし。」 「・・えっ?ええの?」 「・・いいよ。だって、俺も、みとさんとはまた、会う気がするから」 「・・うん、うちも、そんな気がする」 「・・・じゃあ、また」 勇気くんは、にっこり笑うと、ドアを閉めた。 ・・・これが、運命・・・・ そんな“運命の日”は、来た! なんと、また、お兄ちゃんから、連絡を受けて、 「みと、今日、暇か?」 「日曜日やし、暇と言えば暇やけど・・・、お兄ちゃんは、大丈夫なん?」 「まぁ、細かいことは、気にするな。お前に、男を、紹介してやるよ」 「・・え~?うちは、お兄ちゃんに、失恋したのに、そのお兄ちゃんに紹介されるやなんて・・・・」 みんな、聞いたら、なんと言うやろ。 「・・そんなこというなよ~?顔見れば、お前も気に入るんじゃないねぇかな」 「・・っていうか、こんな町中で、一緒にいるうちら、あきらかに、怪しいよね?」 「・えっ?」 「・・だって、お兄ちゃんは・・・・ちょうにんきアイドル・・・サムラ・・・」 「・・バカ!声が大きいよ!バレるだろ!」 お兄ちゃんは、うちの口を押さえた。 「・・・ええやん?バレても。いとこのお兄ちゃんが、スーパーアイドルやなんて、けっこう自慢やもん。」 「・・あのなぁ!」 「・・ふふっ!なぁんて、嘘やわ。」 「・・・みと」 「・・・兄ちゃんが、いとこってだけで、近づいてくる女子がいて、うちに気がないとわかったら、逆に嫌がらせするんやで?うちは、はじめから、ただのいとこやのに・・・・」 「・・おまえには、悪いことしたから、せめてと思って」 「・・おおきに。でも、うちな、この間、ちょっとええ男子におうたんや」 「・・へぇ、そりゃ、よかったじゃん」 「・・うん。それが、運命ならええんやけど。」 「信じれば、いいんじゃねぇかな。みとが、それを信じれば、運命は、動くと思うぜ?」 「おおきに、お兄ちゃん! で?今日は、どんな人、紹介してくれるん?」 「・・それがさぁ、岡本の、元クラスメイトなんだってさ」 「・・・岡本って・・・ えっ?メンバーの、岡本くん?」 同じSAMURAIのメンバー、岡本くんから紹介してもらえるやなんて!ますます、ドキドキしてきた! 「・・ったく、背中はやめろよ」 うちは、ドキドキしながら、待っていた。 その頃・・・ 「・・なぁ、岡本~!!俺、メガネないと、ほとんどみえないんだ。勘弁してよ」 「・・あかん、あかん。あんさんは、メガネないほうが、イケメンなんやから。」 「・・・で?なんで俺に、女の子紹介してくれようとしてるの??忙しいんだろ?」 「・・・おまえ、忘れたんか?言うてたやん!誰か紹介してよ!って」 「・・言ったかなぁ?」 「・・・それとも、美鈴さんのこと、忘れられやんのか?」 「・・・・・・」 「・・ええかげんあきらめて、気分一新したらどうや?」 「岡本先輩が、いとこの女の子、紹介してくれるんや」 「・・・ふーん、いとこね」 「・・ここまできて、逃げるとは言わせやんで? 「・・おまえって、そんなキャラだったっけ?」 「・・ふふふ、ファンが知らない俺をおまえは、知ってるんやで?どうや?惚れたか?」 「・・・なんで、おれが、おまえに惚れるんだよ(笑)」 「それより、俺、大学の宿題山積みで、忙しいんだけど?手伝ってくれるのか?」 「・・すまんなぁー、なんやかんやで、約束の場所に着いたで?」 「・・えっ?うそ!」 勇気は、岡本の、背中に隠れた。 「・・よぉ、岡本ー!遅かったな」 「・・すまんなぁー、先輩。こいつが、メガネ外すと、見えやん!って、騒いで」 「・・・メガネ?そんなことより、待ちくたびれた!なぁ、みと。」 「・・あー!もう!限界!!岡本、メガネ返して!」 その彼は、サッと、岡本くんから、メガネを奪うと、 「・・えぇ?メガネ、かけるんか?」 「・・だって、よく見えないし。これが、本当の俺だし?」 メガネを、かけたその男子は・・・ 「・・えっ?勇気くん?」 「・・・えっ?みとさん?」 勇気くんだった。 「・・えっ?二人知り合い?どういうことや?」 「・・・ってか、みと、なんで、知ってるんだよ」 「・・・お兄ちゃん、彼なんや。さっき言ってた、運命の人って」 「・・運命の人?」 勇気くんが、そう呟いたのを、聞いて 「・・岡本の紹介したい人って、みとさんだったんだ。すごい、偶然」 あれから、まだ、なんにちも経ってないのに。 「・・・?」 「・・なぁ~んや、もう会ってたんやー!ほんま、世の中は狭いなぁ~」 「・・・俺ら、邪魔だから、帰るか岡本。」 「・・えっ?帰るんか?」 「・・だって、紹介しなくても、二人知り合ってたわけだし、これこそ、運命の出会いじゃん?」 「・・そ、そうやけど」 岡本は、少しだけ不安げだった。 「・・みと、よかったじゃん、運命の人に、再会できて」 「・・・うん、そうだね」 「・・俺と、岡本はこのまま消えるから、あとはお二人で、ごゆっくり~」 「・・えっ?」 お兄ちゃんは、岡本くんの腕を引っ張り連れていった。 「・・・お兄ちゃんたち、行ってしもた」 「・・・そうだね」 「・・・どうする?勇気くん」 「みとさんの勘、当たったね。この前、“また、会う気がする”って、いってくれたでしょ?」 「ほんまは、ちょっと、冗談やったんやけど。信じてみるもんやな!」 「そうだね」 「せっかく再会したんだし、映画でも見ようか?息抜きしたかったから、ちょうどいいや」 「うん!行きたい!あのね!」 「勇気・・・・?」 うちと、勇気くんの後ろに、いた女の人は、そこで立ち尽くしていた。 彼女は、勇気くんの想い人、“美鈴さん”だった。 うちも、勇気くんも気付いていなかった。 ここで、運命のルーレットが、廻りはじめていることに・・・・。 「勇気くん、今日は、おおきに。楽しかったわ」 「俺も、楽しかったよ。うさぎのキーホルダーも、お揃いで、ゲットしたしね」 「ラッキーやったな。2つも一緒に落ちてきて」 「・・・あのさ、また、映画でもみない?」 「・・何言うとるんや。勇気くんは、好きな人に告白するんやろ?もうすぐバレンタインやし、逆チョコもありやで? だって勇気くん、女ものの香水見ていたやろ?隠しても、無駄やで?」 「・・み、見ていたの?」 「・・もちろんや。少しだけ、目立ってたし」 「・・・俺の想いは、きっと届かない。どうせ、本気に思われていないしね」 「あかんよ、勇気くん。諦めたら。どうせ~だからって、思っていたら、後悔するよ?」 「・・・みとさん」 「・・勇気くん、名前の通り、“勇気出して”」 「・・・みとさん」 「「・あかんあかん?タメなんやから、さん付けしやんといて」 「・・いや、俺、なんか苦手でさ」 「よし、勇気くんに、指令を与える!」 「・・えっ?指令?」 「バレンタインまでに、告白すること!」 「バレンタインに、告白するのは、女の子だろ?」 「だからや!女から告白される勇気くんになれるように、うちも、協力するから!」 「・・・でも・・・・」 「四の五の言わない約束や!少なくても、少しは素直になるんや?わかった?」 「・・・うん、わかったよ」 「・・よし!今日は、帰ってよろしい!」 「・・あははっ!なんだよ、それ」 「・・あと、もうひとつ・・・・」 「・・・えっ?」 「・・・うちの前では、強がらんくてええよ」 「・・・・」 「・・タメなんやし、気を使わんと、何でも話して?」 「・・・みとさん、それは普通、男のセリフだろ?」 「・・あっ、そっか。そうだよね。でも、とにかく、ファイトや!勇気くん!」 「・・・ありがとう、みとさん」 「・・今日、ゲットしたうさぎのキーホルダーは、友情の証だね!」 うちは、にっこり勇気くんと、話ながら、歩いていた。 勇気くんは、このあとうちを、家まで送ってくれた。 「・・おやすみ、みとさん」 「・・うん、おやすみ、勇気くん。気をつけて帰ってね。」 うちは、なんだか悲しそうな勇気くんの顔が、ずっと頭から離れずにいた。
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