夢を見ていたい

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車を1時間程走らせて向かったのは祖父母の家。 ―ただいま。 心の中で、心から言う。 両親が幼い頃に交通事故で他界してしまった私を、親に代わって育ててくれた祖父母は、私はとても大好きだった。 でも、祖父母も去年老衰で安らかな顔で天へ昇った。 つまり、この家には私一人しか居ない。 五月蠅い蝉の声をBGMに感傷的になっていると、向こうから野良犬が歩いてきた。 野良犬は私の近くに来た後、疲れたとでも言いたそうに座り込んだ。 わんわんっ。 食べ物をくれとでも言うように野良犬が元気に吠える。 ――ちょっと待ってな。 そう笑いかけて台所へ駆ける。 スイカを二切れ掴んで持って行き、犬に一切れ寄越し、一緒にスイカにかぶりつく。 スイカを青臭いとこまで食べきったら、私のマシンガントークが始まる。 上司が今日も嫌なヤツだったこと。 会社をもう辞めちゃったこと。 上司にコーヒーをぶっかけたこと。 何もかも嫌になって家に逃げてきたこと。 どれだけ真剣に話をしても、犬は そんなことどうでもいいから遊ぶか、寝かせてよ。 と、尻尾を左右に振る。 まぁ、そっか。 犬に近況報告しても、犬には関係ないもんね。 はは、ははは、と乾いた笑いで勝手に一人で納得する。 私は空に浮かぶ雲を見て ーなんで私って生まれたんだろうな。 ―君みたいに、自由気ままに生きたかったな。 ――なーんにも、縛られずに。 そう思うと、瞼がどんどん重くなってきた。 ちょっと横になろうかな。 隣の熟睡中の犬に少しもたれかかって、ゆっくり目を閉じる。 ――――おやすみなさい。
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