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来たる日
ネーチャンは近頃しょっちゅうタケズミが生きてるか確認する。デメの時みたいだ。
ズミは独りじゃ生きられないから、いつだって大声で彷徨ってるかまってちゃんだ。かまわれないと死ぬから。存在をアピールしないと死ぬから。
虹の橋で会う神様はそれでいいよね、って言った。生きてもいい。死んでもいい。タケズミが足掻くのを知っててただ見てる。その神様はそんな感じ。
面白いね、って。その神様は言った。記憶もろくに出来ない、音も聞こえない、よく見えてない猫はただひたすらに生きてる。
俺アイツは甘ったれでイケスカナイけどさ。神様ってエライよな。
エライ?と神様は不思議そうだった。神様でも不思議がるなんてヘンだけど、その神様は下っ端だからな。この虹の橋に来る順番を決める神様。虹の橋はいっぱいある。それでここの神様。下界を覗く神様と横並びになって下を見る。見たいとこを考える。神様は何を見てるんだろ。俺はネーチャンを見る。たまに下っ端や手下をみる。
あのな。俺らが死ぬ順番はあんたが決めるんだろ。タケズミがいるとネーチャンがちゃんとなるんだ。俺たちの順番がよかったって俺わかるよ。だから神様って色々わかっててエライな。
違うよ、って神様は言った。寿命は神様が決めるんだ。私は此方に来る順を決めるだけさ。
ふーん。んじゃあさ。いつかネーチャンもここの順番に加えてよ。
隣の神様に顔を向けたら、足元からひゅっとひらひら羽が伸び上がった。ピカピカウロコのトビウオの群れが雲から雲へと飛び移っていく。ピカピカウロコのひらひら羽だ!やべーな!かっこいいじゃん!じゃあね神様!俺行くよ!
一匹くらいは捕まえてそら兄に自慢しなきゃな。後ろ足で蹴って高く高く飛んで両手を伸ばして俺は群れに突っ込んでいく。すぐ近くで知ってる黒猫も高く高く身体を縦に伸ばして両手を彷徨わせていた。雲の丘の向こうから姿勢を低くして駆け寄る折れ尻尾も見える。まだ誰もトビウオを捕まえて無い。1回転で着地して、もういっかい、高く高く俺はとんだ。ひらひらのしゅっとした羽を壊さないように捕まえて、そんで見せびらかすんだ。かーちゃん褒めてくれるかな。さっきネーチャンは笑ってた。よたよたのタケズミがベッドを汚してタケズミも汚れて、洗濯を3回しても夏だから平気ね、ってけらけら笑ってた。これ以上低くならないベッドからマットレスを引きずり下ろして、もう落ちないでね、ってタケズミをやわやわ拭いてた。空を掴んで着地して、もういっかい。今度は雲に降りてくトビウオを狙って飛びつく。捕まえたらみんなに自慢してさ。そんで下っ端にも見せてやってからデメに渡すんだ。シュッとした羽はアイツら好きそうだもんな。ネーチャンにはいつか見せてやる。上手な捕まえかた覚えとくよ。待ってるからさ、ネーチャンもいつかを待ってなよ。
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