1話 集合

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 勉強だって、運動だって目立たないぐらいにしかできないし。ごく普通の、女の子だよ?      そう、アレさえしなければ、至って普通のどこにでもいる女の子だったんだ。あたしは。 ――やーいやーい。 ――6年生にもなって、恥ずかしいの! 赤ちゃんみたい!  嫌な思い出が、頭に蘇る。考えたくない。忘れたい。でも、朝起きるたびに嫌でも思い出してしまう、あの嫌な出来事。  「ほら、中に入ろう。ユメカ」 「アース王子」  ぐい、と引っ張られあたしは門をくぐる。  「うわ、すごい」  思わず反射的に声が出た。  あちらこちらに咲いた大輪の薔薇が、美しかった。本当に、絵本や漫画の中の世界にしか思えなかった。  
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