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台所の作業台に視線をやった香織さんが、顔をほころばせた。
「近くに徳島ラーメンを出前してくれるお店があったのね」
「違うよ。俺が作った」
「え! 真也くんが?」
「うん。話はあと。テーブルに運んで」
「わかった」
香織さんに頼んで、熱々の鉢をダイニングテーブルに運んでもらう。
「さ、熱いうちに食べよう」
「そうね」
軽く手を合わせてから、俺は生卵を崩した。スープに溶けていく卵。行方不明になる前に、豚バラ肉を黄身にくぐらせて頬張る。黄身をまとってまろやかになった豚バラ肉。美味しい。
「真也くん、完璧な再現度じゃない」
「まぁ、九十点ってとこかな」
「またまた、謙遜しちゃって」
「ほら、あれだよ。俺が完璧に作っちゃったら、店の顔をつぶすじゃん」
香織さんが苦笑いをする。
確かに、俺が作ったラーメンは店のものの足元にも及ばない。だがまぁ楽しく作れたし美味しく食べている。
「そうだな。家で手軽に楽しめるという点では百点満点だな」
「真也くんはそうでなくっちゃ」
満足した俺は、最後まで美味しく食べ切った。
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