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■3話 思わぬところで
ある程度の自己紹介を終えて、バエルは早速アイニに到着が遅れたことの説明を求めてきた。
アイニは導きの森でジャバウォックにあったことを詳しく説明し私は、アガレスが入れてくれたお茶を飲みつつ二人の会話を聞いている。
「そうか、ジャバウォックが・・・・・・アイツは何を考えているのか分からんからな気をつけるように兵士に連絡をしておこう」
「後、前も言ってたけどアリスはここに滞在させてもらいますけどいいですよね?」
「構わないアイニの部屋の隣に滞在するといい」
二人の会話を聞きながら私は疑問に思った。
「あ、あのアイニ・・・・・・前もってどういうこと?」
そう、その会話では前から二人と私の事を知っているような口ぶりである、私自身生まれてこの方悪魔や神秘との出会いは今回が当たり前に初めてなのだからこの会話は疑問が湧かないわけがなかった。
アイニ達は何かを隠しているのは明確である、その途端急に不安になってしまった。
不安の表情を見てアイニはしまったという顔をして慌てていると見かねたバエルが話しかけた。
「アリス、君には秘密にしていたが我々悪魔の何人かは君のことを知っていた、君というより一族ではあるがね、とある悪魔が君のことが大変お気に入りでねほぼ軟禁状態の君を助けて欲しくてこちら側に連絡をしていたんだ。 君を連れてくる時に悪魔契約をすることは決めていたがそれを率先して申し込んだのがこのアイニだ、本人は何も言わないがやら君と縁があるらしい」
急な事実に私は混乱しそうになった、悪魔が私のことを知っていた?お気に入り?でもあの状況で交流することなんて滅多になかったし交流といっても執事やメイドなど屋敷で働いている者しかーーーー。
「もしかして、屋敷で働いていた中に悪魔がいたんですか?」
「そうだ、あの悪魔は潜入してあの屋敷で働いていた、その時君にとても世話になり気に入ったらしい」
思わぬところで思わぬ事実を知ってしまい驚きを隠せない、恐怖や怒りはないがただただ驚きを隠せなかった。
とても世話にと聞いたがそんな事をした覚えはあまりない、むしろ軟禁がいやで脱走を何度も試みていたので迷惑の方が多いいのでは?と疑問に残るくらいだった。
一応、屋敷で働いていた者とは当然によく会うため談笑や遊んでもらったことはある。
仲良くしていないと言えば怖かったという意味で父親の側近くらいしか思い浮かばない。
「私はそんなお世話になるような事をした覚えはないんですけど、その方とはいつか会えるんでしょうか?」
「もちろん、ただ今あの悪魔は仕事中でねそれが終わるまではこちらに戻れないと嘆いていたよ、戻った時はこちらで必ず会わせるようにするから安心したまえ」
今までの出来事が奇跡かと思っていたが、こんな所でそんな事実を知ってしまい私はがっかりしたと思ったが、そもそも私自身そんなことも知らないのだからがっかりする必要もないかと思いこのことはあまり気にしないことにした、気にしたところで悩み続けるだけだ。
『こんなところで、外に出たことを諦めたくはないもの』
そう思い頬と叩いて私は気合を入れる、アイニはびっくりし慌てながら私を心配そうに見た。
バエルもアガレスも驚いた顔をしていたがそのうち何かを察したのかフッと笑った。
「やはり、肝が据わっている中々見応えのあるお嬢さんだ」
「えぇ全くです」
***
バエルとの挨拶をやり終えて部屋を出ると、早速アガレスから私が滞在する部屋を案内してもらう事になった。部屋は2階あるようでメインホールにある階段から2階へ上がっていく。
2階に上がると私は奇妙な光景に驚いた、ドアが間隔を開けて設置されている、まるでアパートメントの様に一定の間隔でドアがあるのだ、こんなに大きな屋敷なのに2階の一室一室は相当狭くなっているのだろうかと疑問に思っていると、それに気がついたアガレスが説明してくれた。
この2階は基本的にバエルの部下達が生活している階なのだそうだ最上階の3階は逆に神々や高位の悪魔、バエルの部屋があるそうだ。
そして実はこのドアも魔道具の一つでドアを開けると別空間と繋がっているとの事だった。
何気なく一室のドアを開けてもらうとそこには豪華な部屋がある。
部屋の広さもかなり広くよく見ると2階のような階段も見える。
特殊な加工をしたドアでこういったものは魔力が強いものや高位の者しか使うことができないそうだ。
「そう言えばなんですが、陛下は3階に部屋があると聞いたんですが、ツァーカブにはお城もあるんですよね? どうしてそちらに住まわれないんでしょうか?」
「そうですね、それに関しては私も同意見ですよ、しかし、バエル様は昔の癖なのでしょうね、城に住むのはどうも居心地が悪すぎて嫌なんだそうです」
「城なのにですか!? でもそうしたらツァーカブの城はなんのためにあるんでしょうか?」
「人間の世界とは認識がだいぶずれていますが基本的に防衛や避難としての役割もありますね、あと地下には備蓄用の施設もあります」
ツァーカブは城郭都市ではあるが基本的に城を住居にはしないらしい、避難者のための住居施設や備蓄庫、兵士達の訓練場、大型図書館として使っているそうだ。
バエルは基本的に大事な行事や大きな会合くらいでしかあの場所を使うことがないため、あの場所はその様に使ってくれと城郭都市として完成したあたりから言われていたのだという。
「そうなんですね! そう聞くとちょと図書館もあるのでいってみたくなっちゃいますね・・・・・・」
「その時はアイニに連れて行ってもらうと良いでしょう」
アガレスはそういって笑うとそれを聞いたアイニがもちろんと得意げに言った。
少し歩くと、赤い扉の前についた扉には猫の模様が書いてありどうやらここがアイニの部屋の様だった。
私の部屋はその隣の綺麗な植物の柄が彫られている扉に案内された。
アガレスが部屋を開けると中は広くアンティーク調のおしゃれな家具が置かれていた。
所々ロココ調の家具や調度品も見える、私が生活していた部屋よりも圧倒的に広く窓からは明るい光が溢れていた。
「こ、こんな立派なお部屋お借りしてもいいんですか!?」
「えぇもちろん、ちなみにお部屋にはお風呂もトイレもありますし、ベランダもあります一応空間を調節してアイニのベランダと繋げていますのでベランダからお互いの部屋に入れることもできます」
「すごい! ってアイニの部屋にもいけるんですか?」
「アイニが望めばですがね」
そういってクスクスと笑う、アガレスにアイニが微妙な顔をするどうしたのかと聞くと
どうやら部屋には入ってほしくない様だった。
理由はあっさりと部屋が汚いので修復が終わるまでは絶対入ってこないで欲しいとの事だった。
そんなに部屋を汚したのか、と驚いているとアイニは恥ずかしそうにしていた。
「さて、次にアリス様の身の回りのお世話をするメイドの紹介もさせていただきましょうか。 とりあえず荷物を置いたりもあると思うので、少し経ってから下のメインホールに集合しましょうか」
「わかりました! ありがとうございます!」
「アイニも部屋は片付けてくださいね」
「・・・・・・・・・・・・わ、わかってますよ!」
***
部屋に荷物などを置き終わり、アイニと共に下のメインホールに向かうその最中にバエルとの会話気になったことを思い出す。
「ねぇアイニ、アイニは私のこと前から知っていたのよね、その悪魔から聞いていたの?」
「・・・・・・いや・・・・・・それより前から知ってたよ」
少し思い詰めたような様子でアイニは答える、その様子が何処となく寂しそうに見えてしまう。
「まぁ・・・・・・そこの話はまた今度、その悪魔とあう時にでもするから心配しないで」
アイニは寂しそうに微笑む、私はその様子を見てなんだか深く言及するのを躊躇ってしまった。
沈黙が続く中、階段を降りるとメインホールにはアガレスと横に獣人のメイド服をきた少女が立っている身長は私よりも小さく見える、メイドはこちらに気がつくとゆっくりとお辞儀をした。
「来られましたねでは早速ですが、こちらがアリス様のお世話をするコボルトのリムといいます」
「初めましてアリス様、コボルトのリムと言いますよろしくお願いします!」
「こちらこそ、よろしくお願いします!」
元気よく挨拶した彼女に思わず私も同じように挨拶する、お互い目があうと自然に笑みが溢れる。
「さて、リムについてですが基本的にアリス様の身の回りのお世話をしますお気軽に話しかけたりしてくださいね、そしてこれからアイニと行く事になる“世界”に行っている最中にお部屋のお掃除などもおこないます」
「“世界”とは・・・・・・? なんでしょうか?」
アガレスから私たちが行く事になるその“世界”について詳しく教えてくれた。
まず、悪魔との契約について本来人間の世界では悪魔召喚では人間が契約をすることでその対価を前払い、もしくは後払いすることで願いが叶うのが基本である事、これについてはさらに事細かくあるのだがざっくりとした悪魔召喚はそんな感じなのだとか。
そしてその願いを叶える事について、悪魔自身が勝手に願いのものを渡し叶える場合や悪魔自身にとってその願いを叶えるなら一石二鳥効率重視で併用しながら叶える場合などが上げられる、そう、私の願いはその併用しながら叶えられると判断されこの魔界に招かれたのだという。
そして私が行く場所についてだが、とある“世界”を所有する悪魔が困っておりその原因究明をしてほしいというものだった。
「“世界”というのは皆が総称で呼んでいる能力なのですが、本来はその悪魔の能力で書籍に物語を再現した世界を作り出し封じ込めた能力のことを言います。 その本の中に入ることはもちろんできアリス様の物語の世界についてぴったりというわけです」
「なるほど、原因究明ということはこう事件なんでしょうか・・・・・・?」
「そこについてはやはり、本人に聞くのが良いかと思います。 大丈夫ですよそのかたはツァーカブで会えますから」
私はふとその話を聞いてあることを思い出しはっとすると、それに気がついたアガレスはにこりと笑う。
「えぇそうです、ツァーカブの城に隣接している図書館で館長をしています。 名前はフェネクス魔界随一の魔法図書館を運営している館長です」
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