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■4話 ツァーカブ城
悪魔にも芸術や音楽、小説などの嗜好品を楽しんでいるもの達がいる、ツァーカブの城に隣接する魔法図書館の館長フェネクスもその一人である。
彼は元々、詩を好んで集めていた、神から悪魔の言葉を好んで集めていた彼はそのうち人間の詩や小説なども好む様になったという、頻繁に人間の世界にいくと話を集めてはそれを本にし続けていった。
やがてその本達は彼の魔力や神やその他の魔力を受けていつしか本の世界を作り出した。
世界に入るだけで物語が体験できる、詩の内容を体験できるそんな本は悪魔の中でも大人気になった。
しかし、その人気のせいで彼は大変に困ってしまう事になったのだ。
***
アガレスからリムと私達が向かう魔法図書館について教えてもらうとその後、夕食を済ませリムに入浴を手伝ってもらった後、就寝準備中にフェネクスの図書館について聞いた。
フェネクスのその本は悪魔達の大勢に人気になってしまった、利用者が多くなることは嬉しいことだったがその本に対して“悪さ”をする悪魔達が出始めてしまった
おかげでフェネクスがせっかく集めた本が本来とは違うものになってしまったため、それを修復するので大変に忙しい、猫の手も借りたいということでバエルに依頼があった、そんな時に私の事を知っていた悪魔から私の事を聞き、人間の話は人間に任せるべきではないかとの話が上がったのだそうだ。
「そこで、アイニが自分が連れてくるとお話になられたそうです。 後はおそらくアリス様に会いに行って今に至る感じでしょうか」
「そうだったんだ・・・・・・ありがとうリム教えてくれて」
リムとはすっかり夕食や入浴の手伝いでうちとけてしまった、私よりも背が小さいというのもあり後ろからついてくる様子や嬉しそうに尻尾を揺らしたり時折見せる子供のようなリアクション、終いに敬語を使わずお気軽に話しかけてくださいねと尻尾をふられながら言われてしまうと可愛すぎてたまらなかった。
就寝準備前のやり取りではアイニはその様子を嫌そうな微妙な顔をしながら見ており、ときおり釘を指すようにリムに小言を言っては火花を散らしていた、リム曰くアイニは私の事を気に入っているというのもあるためリムのような専属の執事やメイドができる事をよく思っていなかったらしい、むしろ反対して自分がやると言っていたとの事で私は全力でアイニじゃなくて良かったとおもってしまった。
(だってそれってとっても恥ずかしいもの・・・・・・!)
「明日からはアイニと一緒に魔法図書館に行かれるのですからしっかりお休みになさってくださいね、ではお休みなさいませアリス様」
「うん、おやすみリム」
リムはゆっくりとお辞儀をしながら部屋から出て行った。
ベッドに横になる、明日はいよいよ魔法図書館に行く、私が望んだ物語の世界のような場所、それは一体どんな所なのだろう期待もあり不安もある、それでもやはり好奇心は止められそうにないと実感しつつ私はゆっくりと目を閉じた。
***
翌朝、私とアイニは支度も終えてバエルの屋敷を出発する、馬車で移動しながら私は窓からまた街並みを見ていた、朝だというのに街は賑わっている朝市だろうか所々テントが集まった所が移動中いくつか見えた。
アイニに聞いてみるとツァーカブは大きい国というのもあり各地区で朝市や露店など多く開催されているそうだ基本的に周辺の農村の作物や畜産物を中心に並んでいる、説明を聞きつつ私はツァーカブに入る前に見た作物の積まれた荷車を思い出だした。
「そういえば、ツァーカブの周りあまり川とか水辺があまり多い印象がなかったんだけど、ほら朝市には魚も並んでるじゃない? あの魚はどこから来ているの?」
「あぁそれはね、交流してる別の悪魔が統治してる国から輸入されてたりとかが多いかな〜ツァーカブ産の魚は勿論あるけど数が少ないんだよね後淡水魚メインだから海水魚はやっぱり輸入なんだよな」
「魔界にもちゃんと淡水海水あるのね・・・・・・! もっとこう毒まみれの海とか想像しちゃった」
アイニはそれを聞いて笑うと勿論毒の海もあるよとさらりと言ってきた、魔界は広大すぎるが故にいくつもの海域が存在する、私が想像したように様々な毒が混じった海域や年中雷や炎が降り注ぐ海域なんかもあるそうだ、普通の海はむしろ多いくらいでそういった特殊な海域の方が滅多にない。
海やその周辺に国や拠点にしている悪魔もいるのだそうだ。
魔界に来てから確かにおかしな空間、景色やら魔法など見ていたがおもったより空や川はおもったよりも私のいた世界と何ら変わらないためあまり実感が中々湧かない。
「おもったよりも、私の世界と似たような景色とか多くてちょっと意外だなぁ・・・・・・」
「そりゃそうさ、案外普通が一番って意外に悪魔達もおもってんのさ、まぁ特殊な場所はまじで魔界だなって思うからそのうちそういうとこも案内するよ」
「本当!? わぁちょっと楽しみ!」
私は好奇心に目を輝かせながらアイニに向かってにっこりと笑った、アイニもにこりと笑うと魔法図書館の依頼が少し片付いたらそう言う所にも冒険に行こうと約束してくれた。
「まぁその前にツァーカブ観光がいいだろうけどな」
「あ、それは是非ともお願いしたいわ!」
アイニは任せてくれというとおすすめの場所や食べ物など、じっくり教えるから覚悟しておいてくれと自慢気に言った。
その後しばらく、アイニと雑談をしていると馬車の動きが止まるどうやら城の前に着いたようだ。
私とアイニは馬車から降りると目の前にはツァーカブの城がそびえ立っていた。
白亜の城壁やバエルの屋敷を見ても思ったがツァーカブの城も白亜を基本として作ってあるのだろう白い綺麗な壁に映えるような黒色の屋根や青みがかった屋根も見える、ルネサンス様式の大きな城だった。
「わぁすごい大きなお城!」
「ツァーカブ城にようこそアリス、さてさっさと入って中にある図書館に行こうぜ」
入り口前まで進んでいくと門番らしき兵士と男性が立っている、私は図書館利用者かと思っているとアイニは人物がわかったのか驚きの声をあげる、よくよく見てみるとバエルが立っていたのだ。
「バエル陛下!? お、おはようございます・・・・・・!」
「・・・・・・バエルの旦那なんでこんなところにいるんで?」
「おはようアリス。 さて、城主が城にいてはまずいのか? と言いたいところだが今回は君達の様子を見に来ただけだすぐに仕事に戻る」
バエルは城主であるため勿論多忙なのだが、今回は魔法図書館の問題を受けなおかつそれをアイニに任したため様子を少し見に来たそうだ。
「兵士達には全員伝えてある、フェネクスも中の図書館で待っているそうだ、そしてアリスこれをどうぞ」
バエルは私に腕輪を渡してくれた、綺麗な金属の腕輪所々に模様や宝石のような石が嵌め込まれている。
私がこんな高級そうな物と驚いていると、バエルはこれはお守りなのだと説明してしてくれた。
アイニでは守りきれない場合は、滅多にないだろうがいざというときの保険も兼ねているため無くさないようにと言われた。
私はお礼を言って腕輪を取り付ける、つけても特に違和感はないがきっと強力な魔力か何かがかかっているのだろうと思った。
「では、私はこの辺で失礼しよう、君達がフェネクスの助けになるよう祈っているよ」
バエルはそう言うと指をパチンと鳴らした瞬間姿が消えてしまった。
私がびっくりしていると、アイニが転移魔法で屋敷に帰ったんだと説明してくれる。
「旦那が忙しいのは相変わらずっぽいな、まぁ俺達も問題を解決するのを頑張ろうぜ」
「そうね・・・・・・! 頑張らなくっちゃ・・・・・・!」
***
城内に入ると中は思った以上に広かった、お城なので豪華な装飾や高級そうな家具など当たり前だがそれ以前に驚いたのは、一般人というより兵士ではない悪魔達が多くいることに驚いた。
絵を描いている悪魔や学者のような悪魔が同士と何か熱弁していたり、何かを書いている者城の中なのにと驚いているのを察したのかアイニが説明してくれた。
ツァーカブ城は来賓や月に数度ある会合などがない限りは、入場はいつでも自由なのだそうだ。
利用者のほとんどが図書館利用者で主に学者や画家といった者達となっているためこう言う光景は日常茶飯事なのだという。
ツァーカブ城はロの字型の形状をしており北側の建物に会合や来賓用の部屋が、東と西側に兵士の宿舎や訓練場が、南側入り口側には備蓄庫へと続く地下や、そのほかの設備施設がる。
魔法図書館はその中央、中庭に隣接した形でポツンと立っている。
説明を受け中央の中庭まで進んでいくと言われた通りにポツンと建物が立っている。
それはまさに不思議というか違和感のある光景で中庭の庭園が綺麗なだけに、その建物を見ると変な光景に思える建物の周りというか、鳥籠のような檻の中にポツンと家が入っている謎の建物、しかしその建物からは数人の悪魔が出入りし続けている。
「ほら、アリス前に収納箱で説明したろ? あの建物箱がわりとして使ってるのさフェネクスは」
「収納箱ってほんとなんでもアリなのね・・・・・・」
「なんだっけな・・・・・・そういう別世界に物をしまえたりするとか空間内にしまったり移動させたりする奴が元々いたらしくってなそれを参考にして作り上げた魔道具なんだとか、誰だったか・・・・・・」
「貴公は相変わらず同僚に興味がないのだね」
後ろから私達の会話に割って入ってきた謎の声、声の方を振り向くとそこには赤い髪の毛で頭に羽の生えた中性的な青年が立っていた。
青年は本の束を持ちながら私達を追い越すと図書館の方へ向かう、私達があっけに取られたのを気がついたのか彼は此方を振り向く。
「貴公らが僕の手伝いをしてくれるのだろう? 早く入りたまえ」
「あ、あの貴方がもしかして・・・・・・」
「? あぁそうか貴方はお初にお目にかかるのか・・・・・・僕はフェネクス、魔法図書館の主だ。」
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