エピローグ 1

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高崎 そのこと自体が、世の中の変化だなと感じますね。私の恩師は、専門以外のことにも造詣が深かったのですが、師のことをディレッタントだと陰口をたたく人が少し前までは多かったんです。 編 仏文学者の西澤遙一先生ですか? 先生も編集に携わられた追悼小論集が、本屋大賞の候補になりそうなくらいバズったという。 高崎 はいそうです、よくご存じで(笑)。師が、研究者の枠は超えていなかったにもかかわらずそんな言われ方をされていた頃なら、私など邪道の極みだったでしょう。 編 先生も恩師の影響を受けてらっしゃるのですね。沢山のことができる人って、素敵だと思いますけれど。芸能人でも、そういう方が増えましたし。ただ、いざ自分がやるとなると……。 高崎 その気になればできますよ。これは学生の皆さんにも言いたいのですが、興味のあることは今から何にでも挑戦するといいです。自分の表現の手段はたくさん持っているほうがいいし、全くジャンルの違うことをしていても、自分の中で繋がり、力になります。海外じゃ、アスリートでありながら医師とか、音楽家でありながら弁護士なんていう人も多いでしょう? 編 そうですね。一つのことを極めないといけないという考えって、日本的なんでしょうか。 高崎 一つのことを極めるのは素晴らしいことです。ただ日本では、根性論に根差しているのが微妙なんですよね。それをどうしても手放さなくてはならなくなった時に、方向転換できなければ潰れてしまいます。西洋占星術では、2021年から風の時代が始まっており、一つのことに拘泥(こうでい)すると世の流れに取り残されるということなのですが、ある意味真実ではないかと私は思います。ディレッタント上等です(笑)。 編 今学生へのメッセージをいただきましたが、先生ご自身のこれからの目標など、是非聞かせてください。 高崎 はっきりしている目標は、確実に博士を取り、良い論文をできる限り発表することです。まだ私は研究者として半人前ですから。ただそうなったときに、仕事の配分をどうするべきなのか、迷うでしょうけれど……迷うことも楽しめるくらい、ふてぶてしくありたいです。 編 プライベートではどうですか? 高崎 私もパートナーもカミングアウトしていますし、こうして人に話す機会の多い人間です。自分たちがゲイとして生きていく過程をある程度公開することで、あらゆるマイノリティの指針や手助けになればそれに越したことはありません。ですから、仲良く過ごしたいですね。私たちが別れても、ネタにはなるのでしょうが(笑)。 編 かなり仲良しですよね? 高崎 惚気(のろけ)る訳ではないですが、仲良しですよ(笑)。私もいろいろ問題を抱えていた人間なので、私を受け入れてくれる彼にはほんとうに感謝しています。お互い年を取るまで沢山思い出を作って、彼を介護して見送るのが目標なんです、10こ上なものですから。 編 そんなところまで決めてらっしゃるんですか(笑)。 高崎 人生なんて予想する通り行く訳がないのにね(笑)。ああ、学生の皆さんも強くなってください、想定外の出来事に簡単に心が折れないように。強く、優しくなって欲しいです。きっと女性であること自体で、残念ながら日本は嫌な思いをまだまだしなくてはいけない国です。でも(いわ)れなき差別に疑問を覚え立ち向かうという経験は、人を美しくし、成長させます。そういった経験のない、社会通念などという曖昧で(もろ)いものを根拠に他人を(おとし)めるような人は、可哀想なんです。負け惜しみでなくそう思えるくらい、差別に抗議し、時にはやり過ごして、(たくま)しくなって欲しいと思います。 編 力強いお言葉、ありがとうございます。何とも言えず名残り惜しいですが(笑)、本日はありがとうございました。 高崎 こんなお話しで良かったのでしょうか(笑)。こちらこそ、ありがとうございました。 高崎奏人先生のご担当:「哲学概論」(一般教養科目) 「西洋哲学史」(文学部選択科目) 「新しいジェンダー論/思想と性」(全学部共通特講) 先生の新しいご本:『Kanato作品集 とわのひかり Lux aeterna』(12月下旬刊行予定) ☆Web版おまけでは、高崎先生の20代のころの衝撃的なアルバイトと、パートナーさんとの出会いやこれまでの軌跡を公開しています。カナちゃん先生の知られざる魅力が炸裂していますが、自分が清らかな乙女だと思う方は、閲覧注意です!
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