エピローグ 2

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エピローグ 2

広報課担当(以下広報):本日は貴重なお時間を割いていただき、ほんとうにありがとうございます。皆様、清潔部抗菌課長にお越しいただきました。 桂山暁斗(以下桂山):清潔部抗菌課長の桂山です(笑)。 広報:前回は山中(穂積、企画部長)さんにお越しいただいて、弊社の社員とこのページのファンの皆さまが大喜びでしたので、二匹目のドジョウを狙っています。 桂山:期待にはあまりお応えできないと思いますが。 広報:いえいえ、桂山さんに癒しを求める人々がわんさかいます。桂山さんはこの度営業部長補になられたのですね、おめでとうございます。 桂山:ありがとうございます。初めてできたポストなので、どんな働き方を求められているのか、実はさっぱりわかりません。 広報:そんな話、ここでしますか(笑)。結構桂山さんは社内で爆弾を投げていらっしゃるんですよね……。 桂山:そう受け取られても仕方ないかも知れませんね、冷静に振り返ると、私を馘にせず使っている我が社は寛大ですね。 広報:他人事のように語らないでください。 桂山:(笑)。山中もそうですが、我が社の「すべてのマイノリティのための相談室」の立ち上げメンバーが無駄に闘士ばかりなので、私の言動など可愛いものだと思っているのですが……。 広報:山中さんとは「ダイバーシティ推進広報担当」でいらっしゃるとか。 桂山:そんな担当ありません(笑)。山中の冗談を真に受けないでください。 広報:いやしかし、ゲイをカミングアウトしてらっしゃる2人がガンガン企画と営業をかけてくるというスタイルは、もはや御社の看板なのでは……。 桂山:私は山中に引きずられているだけですし、2人ともゲイなのはたまたまですよ。新商品をよそ様とコラボレーション企画にするというのが、山中は得意なんですよね。 広報:でも営業なさるのは桂山さんですよね、飛び込みもお得意だと伺っています。 桂山:若い人に任せるようにはしていますが、正直飛び込みがあるとテンションが上がってしまうのはあります(笑)。私が新入社員の頃、ちょうど我が社が一番販路を拡張していたので、飛び込まないと仕方なかったものですから。 広報:飛び込みでテンアゲする営業担当者なんて初めて聞きました、うちの社にいるかな、そんな変態(笑)。 桂山:いますいます、自覚のない変態がたくさんいるはずです(笑)。 広報:「清潔部抗菌課」のラインナップは、営業の手ごたえは振り返るといかがでしたか? [※編集注 「清潔部抗菌課」のコンセプトおよび商品紹介はバックナンバーをご覧ください。] 桂山:意外な場所で受けたと思いますね。当初オフィスを主要ターゲットにしていたのですが、テレワークが定着した会社はワークスペース自体を必要としなくなっていましたし、フリースペースを導入する会社も増えて、何といいますか、オフィス、会社自体ではなく毎日4時間から8時間ほど身を置く場所としてのオフィスですね、そこへの愛着が薄れていることを痛感しました。身を置く場所に愛着が無ければ、抗菌であろうが無かろうが、どっちでもいい(笑)。これは違うなと営業担当で話し合いました。 広報:ええ、案外早い方針変更で、うちの営業が不安を訴えていました。 桂山:申し訳なかったですね、ストレスを与えてしまって。試行錯誤するうち、開業医というターゲットを発掘しました。これは私の知り合いの臨床心理士が開業を決め、カウンセリングルームやご自分の診察室に使ってみたいと言ってくださったのがきっかけでした。御社では小売店の事務所や休憩室で、これも意外に伸びたということでしたね。感染症の拡大時にエッセンシャルワークと呼ばれた業種で、一件の売り上げはそんなに大きくなくとも、こまこまと広がったというのは、とても特徴的です。 広報:当社でも、家電と事務機器が組むのは面白いけれど、感染症が落ち着いてからの発売でどれくらい伸びるのだろうという疑問の声はありましたね。それが売り上げがじわじわ上がって来て、皆驚きました。 桂山:私どもは町工場の事務所にデスクなどを使っていただいていますが、同業者の口コミが強いんです。お医者さんもそうなのだと、今回初めて知りました。元々清潔であることを求められる場所でもありますし。 広報:これで桂山さんが只者でないという話になったんですよ……。乗ってくると両社の交流も深まって、楽しいものになりましたね。 桂山:おかげ様で、そちらのSNS広報にすっかり巻き込まれてしまい、無駄に顔が売れてしまいました……。 広報:すみません(笑)。桂山さんが清潔部抗菌課長と呼ばれているのも、弊社と御社でこの企画に携わった主要メンバーの中で、イメージとしてこれは桂山さんだよなと勝手に決めたからなんですよね(笑)。 桂山:有名なタレントさんをCMに起用していたら、私などがその称号を(たまわ)らなくて済んだのでしょうけれど。 広報:あ、うちがケチったせいですね。 桂山:うちも宣伝費の予算は低かったです、だって度重なる緊急事態宣言で大打撃を受けた後の企画でしたから。 広報:あの時期の営業は辛かったのではないですか? 桂山:はい。自宅待機もありましたし、直接会ってご提案できないなどという状況を、私もそうですが誰も想定していなかったので、どうすればいいかわからなかったですね。 広報:でもその中でも取引先に連絡を取ってらしたそうですね。 桂山:とくに60代70代の方たちがお元気でいらっしゃるかどうかが心配で、順に電話やメールをしたんです。皆さん割と喜んでくださって、Zoomを使おうとおっしゃる方とは、顔を見てお話しもできました。売り上げはぱったり止まりましたが、そんな中でも感染症が落ち着いたら社員を増やすからと言って、デスクの新調と買い足しをしてくださった会社もありましたね。有り難いことです。 広報:桂山さんから直電をもらって、落ちない相手先なんかいないでしょう。 桂山:いや、私って一体何なんですか(笑)。 広報:愛の種を蒔く、飛び込みが好きな変態(笑)。ではこの辺りから、恒例のプライベート暴露に入りましょうか。 桂山:主なテーマは、私が妹から変態と呼ばれている件ですかね。 広報:営業の姿勢以外でもそんな言葉を賜ってらっしゃるんですか? 妹さんひどい。 桂山:今は冗談でしか言わないですよ。昔、私の家に遊びに来ていた母と妹が、パートナーとバッティングしたことがありまして、プチ修羅場になりました。私は必死で彼との関係をごまかそうとしたのですが、うまくいかなくて、パートナーのほうが告白してしまいました。 広報:(笑)。桂山さんらしくてヤバいです。 桂山:その時に妹が、「お兄ちゃんが変態になっちゃった!」と叫びました。 広報:(爆笑)。すみません、妹さんも面白いです。 桂山:妹も有り難いことに昨年結婚しまして、お相手の方も身内に変態がいることを受け入れてくださっていますから、今となっては楽しい思い出です。 広報:それはおめでとうございます。桂山さんは同性パートナーシップ制度でパートナーさんとは入籍されているような状態ですが、お式はあげられない? 桂山:いや、私2度目なので……彼がやりたいというなら考えますが。 広報:初回のお相手は女性だったんですよね。 桂山:そうですよ。私が自分の性的指向に気づくのが遅かったせいで彼女を傷つけましたが、お互い新しいパートナーを得て、彼女は今でも良き友人です。
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