エピローグ 2

3/3
前へ
/118ページ
次へ
桂山:母校の就職課のイベントや合同説明会に駆り出されると、ちょっと辛いんですよ。会社の多様性について語らないといけないので。私にしてみれば、私の連れが男なのは私の勝手だし、会社のマイノリティへの対応を問われたら、うちはまだまだ遅れていますから。 広報:説明会のブースに座ってらっしゃるんですか? 桂山:はい、たまに人事担当と一緒に。営業の話が2に対しそっちの話が8です(笑)。 広報:広告塔は大変ですねぇ(笑)。でも「相談室」はしっかりしていますよね。 桂山:おかげ様で相談室もいろいろなご相談を受けていますよ、私のプライベートの犠牲で軌道に乗ったと思っています。 広報:ニューズレター、毎月面白いですよね。御社の相談対応は見習うべきものがあります、社内の連携もすごいですが、外部へのワンストップ体制も見事です。 桂山:医師や弁護士の助けが必要な時とは、緊急である場合が圧倒的です。相談室を開室した当初、医師や弁護士にこちらから当たるなんて大げさなのでは、という意見もあったのですが、早めに先生方と繋がっておいて良かったという事例が発生しました。相談してきたご本人が、事態の深刻さに気づいていなかったんです。こういうこともあるのだなと。 広報:開室の初期から携わっている医師や弁護士は、桂山さんの伝手(つて)だとか。 桂山:はい、と言いますか、私の知り合いに顔の広い方がいまして、その方に間に入っていただきました。 広報:桂山さんこそ異様に顔が広いというか、どこでそんな人と知り合うの? という人脈を持っていますよね。 桂山:そうですか? 割と身近なところに、良い人脈ってありますよ。例えば会社の医務室の先生のお知り合いも協力してくださっていますが、医務室の先生と親しくなったのは、私が熱を出して会社のロビーでぶっ倒れたのがきっかけでした。 広報:いやいや、会社で倒れないでくださいよ! 桂山:不覚でした(笑)。でも会社で体調を崩しでもしないと、先生と知り合うこともないですよ。それがパートナーと親しくなるきっかけにもなったので、何かと怪我の功名です。 広報:前向きですね(笑)。営業の仕事だけじゃないのでお忙しいのではないですか? 桂山:大丈夫ですよ、社畜ですから(笑)。 広報:ワーカホリック(笑)。それが一番問題のような気がしますが、これからの抱負ってありますか? 桂山:まず会社が潰れないように励ませていただくとして(笑)、こういったよそ様とのご縁は大切にしていきたいですね。会社の利益になるだけでなく、私自身が成長させていただけますから。パンデミックで人と人が顔を合わせて繋がりを深めることそのものに危機が訪れましたし、人と話すのはオンラインでいいじゃんという空気も広まりました。私は人と接することがやはり好きですから、直接話したり、誰かを介して知らない人と繋がったりという機会を大切にしたいです。 広報:もう今のお言葉で、桂山さんの崇拝者が倍増しました。 桂山:そうですかね、面倒くさい奴だなと思う人もいますよ。事実面倒くさいですし(笑)。あと、これは課題なのですが、自分と考えを異にする人を、最初から否定したり切り捨てたりしないことでしょうか。これは自分がマイノリティの立場となってから、肝に命じているのですが、なかなか難しいですね。 広報:桂山さんがそれをできていないとおっしゃるなら、この世の誰ができているというのでしょう。 桂山:いやいや、だから私って一体何なんでしょう。 広報:だから愛の種を蒔く、飛び込み好きの変態ですって(笑)。パートナーさんとはどうですか? 桂山:感謝を忘れず、これからも仲良くしていきます(笑)。彼なくして今の私はありませんので。私たちのことを特別視する雰囲気が薄れて、普通のおじさんとお兄さんになって、テニスなんかしながら穏やかに過ごせたら嬉しいです。 広報:ふふふ、どうもごちそうさまでした。 桂山:胸焼けしましたね(笑)。 〈対談を終えて〉桂山営業部長補の高好感度と抜け感が堪能できるひとときとなりました。ご本人は否定(拒絶?)していますが、山中企画部長とほんとにいいコンビです。営業部のかたの話によると、桂山さんは管理職になっても取引先からのご指名が多い(ナンバーワンホスト?)し、たまに外回りに出さないと、病気になる(大型犬?)そうです。普通のおじさんになりたいなんて言いながら、データを除く発行部数が2万を超える「相談室」のニューズレター等3カ所に、同性愛者として生きる徒然エッセイを絶賛連載中ですので、興味のあるかたは是非。ゲイであることを自分の事情だと言い切り、抱負を訊かれて、出世という言葉を一切口になさらない謙虚さに痺れました。お仕事の話をしている時と、パートナーさんの話をしている時の表情の違いも、チャーミングなんですよ。どれだけパートナーさんのことが好きなんだ、アキちゃんは。まだまだこのままでは終わりそうにない人です。  あきとかな ~恋とはどんなものかしら~   Aki e Kana ~Che cos'e l'amore?~                  完 Fine
/118ページ

最初のコメントを投稿しよう!

361人が本棚に入れています
本棚に追加