3. 積年の想い

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. 夢中で走っていた。 もしかしたら、陽斗が追いかけてくるような気がしたから。 けれどもその様子はなくて、私は息を切らせながらゆっくりと足を止めた。 そこは偶然にも海翔と再会した場所で、川の流れる音だけが静かな夜の中で誇張しているように聞こえた。 陽斗が、何かを告げようとしていたときの出来事。 今だから分かる。 あの時、きっと陽斗は私に「好きだ」と伝えようとしたんだ。 でも私は、好きだなんて言葉、聞きたくなかった。 陽斗とはずっと変わらない関係でいたかったんだよ……。 多分、もう元には戻れない関係に、自然と涙が溢れてくる。 「……萌?」 大通りの方から、聞き慣れた声がしたので、指で涙を拭って顔を上げた。 そこには私服姿の海翔が立っていた。 「海翔……こんなところで、どうしたの?」 「塾の帰りだよ。萌こそ、何してるの?」 周辺が明るければ、きっとこの涙に気づかれていただろう。 今が夜だということに救われたと安心していたが、近づいてきた海翔はあっさりと私の異変に気づく。 「……泣いているのか?」 「……」 海翔と再会したとき、彼の冷たい態度に傷ついて泣いてしまった私を、優しく励ましてくれたのは陽斗だった。 陽斗は、どんな気持ちで私を元気づけてくれたのだろう。 .
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