6. 夕暮れの告白

40/44
588人が本棚に入れています
本棚に追加
/296ページ
. 「萌、待たせて悪い」 「ううん、気にしないで」 そこまで時間が経っていたようには思わなかったけれど、実は30分以上待ち惚けていた。 多分、陽斗のことだから、友達を上手く振りきれなかったのだろうと思う。 さて、どんな風に切り出そうかな……。 単刀直入に好きと伝えるべきなのか、前置きをしてから徐々に話を盛り上げて伝えるべきなのか。 陽斗も海翔も、美桜ちゃんも楓ちゃんも、みんなこのプレッシャーを乗り越えてきたんだ。 だから、今度は私の番。 胸に手を当てながら深呼吸をして息を整えた。 「……公演、観に来てくれてありがとう」 「そんなの当然だろ。御礼を言われることじゃない……ってか、話ってそれか?」 「うん………あっ、違う!」 「どっちだよ」 緊張のせいか、話がうまく嚙み合わないけれど、陽斗は至って普通だ。 その時、外から和太鼓の音がした。 後夜祭が始まる合図だ。 ほんの少しだけ茜色に染まった空の下で、キャンプファイヤーの点火式が行われている。 .
/296ページ

最初のコメントを投稿しよう!