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ブランコに乗りながら、楽しそうな笑い声と兄が蹴るボールを、遠くから寂しい気持ちで見つめていた。
すると、見覚えのない3人組の男の子たちが、私に近づいてくる。
真ん中の男の子は体つきがよく喧嘩が強そうで、迷うことなく側にやってきて、私が座っているブランコの鎖をぐっと掴んだ。
「これはオレのだぞ!勝手に使うな!」
「そうだそうだ!ここのブランコは、たかちゃんのものだ!」
両脇にいる二人は、まるで子分のように彼の言葉に同調する。
突然の出来事に驚き、私は何も言えずに、怖くて泣きそうになってしまった。
こういう時、いつもなら兄が助けてくれるけれど、今は私のことなど完全に忘れて友達とのサッカーに夢中だ。
「はやくどけよ!」
そう言って、「たかちゃん」が鎖を激しく揺さぶると、他の二人も彼の真似をするように加わる。
三人がかりで前後左右に揺さぶられるブランコから、私は呆気なく振り落とされて尻餅をついた。
地面に膝をぶつけて、擦りむいた箇所からは微かに血が滲む。
痛みと怖さと、何もできはい不甲斐なさを噛みしめながら、今にもこぼれそうな涙を我慢していた、その時だった―――
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