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「あ、梓ちゃん!」
言われた駅前まで着くと聞き馴染みのある声。その声がする方を見ると私の大好きな笑顔がそこにあった。 目尻をこれでもかと下げたその笑顔は何ともチャーミングだ。
「わざわざこんな時間にごめんね」
「いえいえ」
もう終電はなくなっていた。私を呼ばなくてもタクシーを拾って帰ったらいいのにと思ったけど口には出さず心の中にしまった。
「あ、この洋楽いいね」
車に乗るなりそう言われて少し照れくさくなった 。自分が褒められてもいないのに何故こんなに照れているのか全く分からない。洋楽好きなの? と松村さんは助手席でシートベルトを付けながら聞く。あまり詳しくないが流れで好きと答えた。すると松村さんはさっきの私と同じように口ずさみ始める。私と違って心地よい歌声だ。
少しして歌声が聞こえなくなったと思って信号待ちの時に隣を見れば松村さんは綺麗な顔をしてスヤスヤと眠っていた。ゆっくりと音楽を小さくし、ブランケットをかけてあげる。何だか独り占めしてるみたい。自然と広角が上がる。胸が高鳴るとはこのことか。
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