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「レジーナ……ッ」
愕然としたその声に、はっと息を吸った瞬間、頭上でくぐもった呻き声が漏れる。重なった眼差しの向こう側で、ジェイドはまるで自分が傷を受けたかのように目を眇めた。
「お前ら、精々覚悟しな」
怒りを含んだ低い声が聞こえてからはあっという間だった。鈍く光る短剣を容易く躱し、ジェイドは男の首の後ろを肘で打つ。同時に、もう一人の男の腹部を蹴りつけた。ばたばたと、男たちが呆気なく地面に頽れる。ジェイドは男が手離した私の外套を拾い上げると、こちらを振り向き、夜色の瞳で私を見下ろした。
草を踏む音が近付いてくる。震えの止まらない身体を抱きしめながら、私はジェイドの瞳を見上げた。
「無事でよかった」
闇色の外套を翻した彼は、気高く高潔な騎士のように、私の目の前に跪いた。ジェイドは破れて砂まみれになった服を纏う私に、自分の外套を羽織らせると、物語の中の王子のように私を抱き上げた。
「……どうして、ここ、に」
「仕事の帰りに、あんたの声が聞こえた気がした。気のせいだろうと、思ったが。こんな時間に、どうしてこんなとこにいる」
まるで奇跡のように、私の声はジェイドに届いていた。心がたちまちに緩んで、私の瞳からは涙が零れる。
「ジェイド、……わ、私。あなたに、どうしても、伝えたいことがあって」
涙に咽ぶ声の合間に言葉を押し込んだ。縋るように、祈るように、彼の瞳を見つめて訴える。
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