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オレの声はもう、正常を保てなかった……。
「私を洗ってくださいませ」
「ヘっ?!」
「神宮寺家のしきたりでございます。ダンナ様には、最初に全てを見てもらわないといけない決まりになっております……。これは、傷物ではないということを目で見て、手で触ってもらって確認してもらうためです。ですのでタオルを使わずその手で全てをお触り下さいませ」
オレの頭の中で警報ブザーが鳴り響いていた。クロではなく、自分自身のものだと思う。
「あ!シ……しまっタ!」
声は裏返ったままだ。
「今日のユ……夕方に用事があるんだった!よシ!帰ロう!ミんな、出るゾ!イそゲ!」
とオレは最大限の勇気を振り絞り、平凛達に言った。
「ダンナ様……」
平凛が何か言いかけたが、オレはもう聞かず脱衣所に飛び出して体を拭くのもそこそこに、服を着た。
もしあのまま体全体を触ったりしたら、クビが飛ぶどころのさわぎじゃなくなってたよな。
「その通りね」
クロか……「オレは貞操を守ったぞ!」
「ウフフ……」
とクロが笑った。
渚の街のモノクローム「番外編」終
あとがき&作者雑感は次のページで
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