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「何があるのかね?」
「これは私の進めていた別のプロジェクトの資料です。ご覧になりますか?」
と私は言って資料を配らせた。
「む?」
前所長派の者たちが「おぉ!」とか「これは?」
とか口々に騒ぎ出した。
「このプロジェクトはどこまで出来てるんだね?」
と少し不安そうに尋ねてきた。
「あとは最終実験のみとなっています」
私は内心「勝った」と確信した。
「こ……こ……こんなことが本当にできるのかね?」
「はい。DNA特化ですが、間違いなく。あとはオッドアイは調整を残すのみです」
「過去にこんな猫を送ったら、パニックを起こすんじゃないか?」
「そんなヘタなコンタクトはさせませんよ」
私は嘲笑を込めてそういった。
私の進めていたプロジェクトとは、猫が特定の脳波を持つ者と意思疎通を図る方法と、猫が人の脳波を読み取り、その人の意思を読む方法、これはオッドアイと脳波を組み合わせてなせる人の考えを読む方法である。
この2種類の猫達を使って、歴史を変える方向に過去の人を誘導する、というのが私の理論だった。
数年前と違って今では治安がひどすぎる。私の父が総理となってからは少しは落ち着きを見せてはきたものの、外国の勢力が局地的にテロを起こすなど昔の日本では考えられないことばかりが起きている。
「もう少し早く父を総理にしないと……」
と私は小さく独り言を言った。
そのために私はやり遂げる。私がここに来て真っ先に開発した過去の事象を観測する装置によれば、私の6代前の平凛という祖先を守らないと、父も私も消えることはないものの、違う世界線になってしまうという研究結果が出ている。だから政府は躍起になってこの研究所に予算をつぎ込んでいるみたい。今まで何もしない所長の懐にどれだけ無駄なお金を入れてあげたのか……。
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