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2.贈られたクロとシロ
タイムトラベルをするためには、大きなタイムマシンを使うようなことはしない。猫の体内に埋め込んだチップ、TTC(タイムトラベルチップ)を使う。ただし過去に送るだけの一方通行になる。
今の技術では、確定していない未来に送る技術はリスクが大きすぎるため禁止されている。
TTCは時空を超えて信号を送ることができる仕様になっていて、ここにいて過去のどの時代の、どこにいるのかを観測することが可能となっている。
といっても、私個人が勝手に誰かを送り込むことはできない。どんな目的で、その時代の何に干渉するために送るか、ということはあらかじめ政府に許可をもらう必要があった。過去に送る理由・場所には厳格な決まりがあるというわけだった。
送り込んだ後にそれが原因で未来が変わっても、今、私のいる世界線が変わるというわけではなく、別の世界線の私達が変わるだけでこの世界線上には影響することはまずないという研究結果が出ている。
私は所長として先日猫二匹を送る計画を政府に打診しておいたのが、今日やっと許可が下りた。
部下に命じて明日いよいよ猫達を過去に送る準備を進めることにする。もちろん前所長ら半数の者はプロジェクト自体に加わりもしていなかったから、話す義務などないし。
今回使う猫達は、茶トラとキジトラのシマ猫二匹で、あらかじめ茶トラには会話能力、キジトラには思考を読む能力を与えてある。
…………
翌日……
いよいよ実験本番の日。テストケースでは80年前まで送り込むことに成功し、生存も確認できた。今回は200年前と少し長くなるけど、私の理論上ではいけるはず。
猫達を所定の場所に配置した。「あなたたち、頼んだわよ」
と私は言い、スタートボタンを押した。
茶トラとキジトラの二匹の姿が少し色あせたように見える。いつものエフェクトだった。この後、二匹は真っ白な雪のような色に変わり、その後砂が散るように飛散して消えるのがいつものパターンだ。
しかし……
二匹が真っ白になる前に、というかまだほとんど色が変わらない状態の時に、砂が散るように消えてしまった。
「え?!」…………
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