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私はこんな現象は初めて見たし、今までに例がなかったので不安になりつつも、「トレーサーをONにして!」
と叫び、今送った二匹の軌道を調べるよう命じた。
「こ……これは?」
とトレーサーと呼ばれる、いわば追跡装置を見ていた職員が不安そうな声を出した。
「どうしたの?正常に動いてる?」
「そ……それが……」
「どうなったんですか?」
「シグナルロストです……」
「え……?!」
失敗した……と思った瞬間、今送ったばかりの空間に白い砂のような物が集まってきて、二つの塊になりだした。
よく見ると猫の形になっているようだ。白く光っていたその猫の形の物体は、火が消えるように光を失ったかと思うと、黒色と白色の猫になった。
直後、私の頭の中に、「私の声が聞こえますか?」
という声が聞こえてきた。
「何なの?」
と思ったら、「あ、ちゃんと聞こえてるようね。話さなくても、考えればいいですからね」
とその猫は言った。「私はメッセンジャーなんです」
「え?!」
「私をここに送った人からのメッセージを……というか、本人と代わりますね」
とはっきり言った。その後、
「私の名前は岡野千世といいます。同じ時間軸の別の世界線にいると言えば、あなたならわかりますね?」
「ハ……ハイ」
「あなたの開発したTTCですが、少しだけ不備があるの。パーツで言うと、EブロックのP-1の部分です。そこの熱が逃げずにプログラムがループしてるわ。だから、さっき送った猫達は、うまくいかなかった。100年までなら、だましだましうまくいってたんですけどね。それより過去にはちょっと……。でも、私でさえなしえなかった過去に送る技術はさすがだと思います」
「そうだったんですか……」
「……それで私からお願いがあるんです。私が送ったクロとシロは、本来あなたが過去に送った目的と同じように会話能力と思考を読む能力を与えています。ただ、私達の技術では同じ時間軸の世界線を渡ることだけしかできないことがわかりました。
あなたはキチンと過去に送ることをやってのけたわ。その技術でこの二匹をまず100年前の私の祖先に送って、あとはその人に託して欲しいんです。私の祖先なら、あなたの技術を伝えてくれれば同じ物を作る能力があるんです」
「祖先と言うと?」
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