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3.岡野蒼(あおい)という天才
私は岡野 蒼 29歳。政府直属の情報管理保全の仕事をしている。日本で最大のNMMシステムの構築者であり、制作者でもある。
NMMシステムというのは、メモリ数100エクサバイト(約1億テラバイト)を持つウルトラスーパーコンピュータで、日本の全官公庁はもちろん、主だった企業のコンピュータとも接続されている。
また外国でも主だった企業とは繋がっていて、このシステムの最高権限を持っている私がやろうと思えば、自衛隊の持っている潜水艦からミサイルを発射することだってできる。
ま、そんなことをすればすぐに捕まるでしょうが……。
私はここに来る前は、あるゲーム会社のSEとして働いていた。その会社はブラックで、ほとんどずっとプログラム・ルームに閉じ込められていたため、夜寝るときも食事の時も、そのルームから出してもらえなかった。
外部からのホコリ等の予防のためと会社は言い訳していたけど、他社にデータが渡ることを警戒しているように感じた。いわば、私達は監禁状態になっていた。
数日に一度、ほんの2~3時間の外出が認められたが、出ていく時にはGPSを付けられ、ずっと録音され、カメラまでつけられた。トイレもまともに行けないような職場がイヤで、6年前に今の部署に移った。
ここに来た時、自由な発想で何でも作れと言われたので、色々考えているとNMMシステムを完成させてしまっていた。監禁されていたうっぷんを晴らそうと思ったら、そうなってしまった。これを、怪我の功名と言うのかな?
今では情報管理保全所の所長にまでなってしまった。責任を持たされたら、悪いことはできないわよね。
私の次の構想では、人間の思考パターンを組み込んだスーパーコンピュータを考えている。コンピュータに人間の感情を持たせようというものだけれど、多少の反対も出るだろうことは予想ができる。
人間の感情は揺れ幅が大きすぎるためだ。「スーパーコンピュータが感情的になって、ヒステリーを起こしたらどうするんだ!」
というのが反対する理由らしい。それも含めての「感情」なのだけれども……。
私はキーボードを叩くのを止め、遅い昼食を摂るために食堂に入った。食堂と言っても、時間がもう2時過ぎなので私一人しかいなかったが……。
ボタン一つでホカホカのメニューが出てくる。今日初めての食事だ。スープを一口飲んだ。
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