magic nearmiss 孤独なティンカーベル

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ひと昔前までは魔王と呼ばれる悪者と勇者と言い伝えられる世界だったが・・・そういう存在もおとぎ話となった頃・・・一人の冒険者がフードを深く被ったまま門の前で佇んでいると、おいそこの兄ちゃん!と連合王国側の鎧を着た兵士が声を掛けて来る。 「見た感じ冒険者っぽいが・・・ここから先は・・・その何だ?」 「ああ、ここがあの元ジオック王国とは知っている。何か仕事が有ればと思って来たんだが・・・ダメか?」 そう尋ねるフード姿の冒険者に門番の兵士からアンタも物好きだね・・・と呆れた声が聞こえると同時に門の脇に有る小さな扉が内側から開き出す。 「すまない・・・所で多少はマシな宿屋を教えて貰えないか?」 「おっと、マシね・・・?今のこの国じゃどこも似たり寄ったりだが・・・このまま真っすぐ大通りに有る閑古鳥って言う宿屋がおススメだよ。」 そう答えて来る門番の兵士に有難う。と答えながら銅貨を10ギル分謝礼を払うと、ヒドイ名前だな・・・と思いながらゲートをくぐったフード姿の冒険者はその言葉以上に荒れ果てた街並みに言葉を失くしてしまうと、これでも大分マシになったんだぜ?と雰囲気から察したらしい門番の男が苦笑いを浮かべて来る。 「それじゃあ前はもっとひどかったのか?」 「まあな・・・少し前までは略奪に殺しは当たり前で俺達もてんやわんやだったが今は大分落ち着いたかな。」 そう言い頭をガシガシと描き出す門番の男にフード姿の冒険者がそうか・・・と答えると小さく頭下げながら紹介して貰った宿屋へと歩き出す。 ~~~ 「らっしゃい・・・お前さん一人かい?」 宿屋を見つけたフード姿の冒険者はカウンターの中に座って居る宿屋の主人にそう不審そうな顔で首を傾げられると、・・・ああそうだ。と答えながらそのまま宿屋の主人の前に立つ。 「一週間ほど泊まりたいんだが部屋は空いているか?」 「今はそうだな・・・まあ空いて無い事も無いが、コレ持ってんのかいお客さん?」 顔を隠す様にフード姿を被る目の前の冒険者に対し明らかに疑う様な顔で宿屋の親父が聞いて来るので、コレなら良いか?とフード姿の冒険者はハァ・・・と溜息をつくと、腰から取り出した巾着から銀貨を一枚取り出しながらカウンターへと向かって放り投げる。 「正真正銘の本物だ。それなら十分だろ?」 フード姿の冒険者の投げた銀貨を持ったまま驚いた顔で凝視する宿屋の親父がこ、こりゃあエリス銀貨じゃ無いですかい旦那っ!?と声を上げると、それで部屋は?とフード姿の冒険者は僅かに見える口元をニヤっとさせるので有った。
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