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毎晩のように侑生の部屋でこの行為に及んでいるが、いつも床に膝をついた状態であったため、両膝に軽く痣ができてしまったのだ。気温が高くなり、今日から部屋着を長ズボンのスウェットからハーフパンツに切り替えていた。そのため膝が見えてしまっていたのだろう。
もしかして、それを気にして今日はベッドに座らせたのだろうか。僅かでも自分を気遣ってくれたことが嬉しい。少しだけ正気に戻り、慌てて侑生から目を逸らした。
「これからは、ベッドでしようか」
侑生の手が、公季の肩を優しくなだめ、落ち着かせるように諭す。そしてその手がそのままゆっくり下に降りてゆき、今度は腰の周りをゆっくりと撫でる。
突然のことに頭が追いつかない。侑生のベッドで、彼の手が自分に触れている。侑生の触れている場所は全て布越しであったのに、直接触られていると錯覚するほど身体は敏感になっていた。
今、絶対耳まで赤くなっている。無駄であることは重々承知だが、少しでもそれを隠そうと下を向く。
「なぁ、いつもより興奮しない?」
それからは早かった。
すぐに公季のそこは硬さを持った。公季が自らのものを扱いている間、侑生の手が公季の手を撫でる。
一番敏感なそこに直接手が触れているわけではないのに、侑生にされているような感覚。こんな風に身体を触られるのは初めてだ。
ぬちぬちと、静かな部屋に音が響く。いつもと違うのは、侑生の呼吸の音もそこに混じっていることだ。シングルのベッドに平均的な体型の高校生男子が二人。息づかいも分かるほど近くにいることを実感する。いつもの気持ちよさに、そんな興奮材料が加わったのだから、公季は早く達してしまった。
「膝、早く治るといいな」
身体に触れ、ベッドに横たわらせるといったいつもと違う行動は、膝に痣をつくらせてしまったことへの彼なりの罪滅ぼしなのだろうか。だとすると、心理的な距離の縮まりを密かに期待してしまった公季は、恥ずかしさに黙り込んだ。
そっと顔を上げると、不自然なほどに満足そうな侑生と目が合う。まだ彼のそばにいられる理由があることに公季は安堵し、二人は情事を終えた。
マイノリティである同性への恋心。叶わないとわかっている。でも少しでもそばにいられるのなら、俺は幸せだ。彼が満たされない何かを満たすために自分を利用しているなら、喜んで利用されよう。
そう自分に言い聞かせ、公季は侑生の部屋を後にした。
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