14 最後の日

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「あ、あっ、……ゆ、せい」   寝転んだ状態で対面し、お互いの性器を触り合い、擦り付け合う。とろんとした顔に、何度もキスをする。  久しぶりに公季の乱れた姿を堪能する。 「公季、して欲しいことある? 何でもするよ」  頭を撫で、少し癖のある髪を指で()かしながら侑生が問うと、公季は妙に真剣な顔になる。 「……なんでも?」 「うん、何でも」 「じゃあ、最後まで……したい」  何かを決意したような表情でこちらを見つめ、脱げかけのズボンのポケットからコンドームを取り出した。  公季とのセックスでは、まだ後ろを使ったことがない。  異性愛者である自分にとって、同性である公季とその行為に及ぶことへ全く抵抗がないかと聞かれたら嘘になる。無知が故に怪我をさせる、なんてことも絶対に避けたかった。 「いや、俺は公季が痛がることをしたいんじゃなくて」 「大丈夫。準備、してきた、から。……いつも侑生に気持ち良くしてもらってるから、俺も侑生のこと、気持ち良くしたい」  段々と涙目になってきたが公季は続ける。 「気持ち悪かったら、すぐやめていいです。だめですか?」  本意でない泣き顔は、今日に相応しくないだろう。 「……痛かったら、すぐ言えよ?」  侑生は愛撫を再開し、その手を未だに暴かれたことのない場所まで伸ばした。  周りのしわをなぞるように指を動かすと、小さな子どものようにぎゅっと抱き付いてくる。  少しの身長差はあれど体格はそれほど変わらないのだが、縮こまっている公季がとても小さく見えた。そんな公季を両腕で包み込む。 「怖い?」  ブンブンと公季は首を横に振り、このまま続けてほしいことを示す。   ゆっくりと(すぼ)まった場所に圧力をかけると、意外にもすんなり指が侵入していく。 「もう一本いけそう?」  今度は首を縦に振った。  指を増やし、中を広げるように慣らしていると、かなり(ほぐ)れてきたようだった。 「準備したって言ってたけど、こんな柔らかくなってたんだな」  侑生にとって未知の領域であるそこは、やはり性的な感情と結びつかない。愛撫というより、作業のような手つきになってしまう。  ぎゅっと抱き着いたまま公季が小声で漏らす。 「……今日のために、毎日慣らしました」 「え?」 「侑生が、俺ので気持ち良くなれたら、嬉しいし安心できる。俺は女の子にはどうしても敵わないから」 「おい、俺は公季のこと女の代わりにしようなんて思ってな――」 「わかってます。でも、侑生は俺と最後までするの、避けてる。……やっぱ男の俺じゃだめだったって、いつか冷める日が来るかもって思ったら……」  完全に涙声になってしまった。  公季がここまで思い悩んでいたことに気付かなかった自分に呆れる。
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