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3 一目見たとき
大森侑生の見た目は、とても整っていると思う。
切長のつり目とスッと通った鼻は印象的だし、立ち振る舞いにも品がある。だがあまり人を寄せ付けない雰囲気を持っていた。
普段一緒にいる人は特定の一人で、たまに知り合いであろう人とすれ違う時も、表情を変えずぼそっと軽く挨拶を交わすだけだ。
しかし実際公季が侑生に惹かれたのは、彼の思慮深いところだった。
去年、高校に入学して最初の定期試験を控えたある日のこと。公季は勉強に手がつかなかった。
それもそうだ。全く楽しくないし、自分の人生にどう役立つかも想像できないのだから。そんな公季がこの県内トップレベルの高校に入学できたのは、親から逃げたいという一心でひたすら勉強したからだ。
比較的裕福な家庭に生まれ、幼少期からたくさんの習い事をさせられてきた。
ピアノ、バイオリン、絵画……期待していたほどどれも上手くはならず、芸術の才能がないと見切りをつけた親は、今度は少年野球チームに入れたり水泳などスポーツをさせた。どれも楽しくないし、他の子どもと比べて自分の息子ができない姿を見たくなかったのか、半年も継続できないまま親に一言「辞めたい」と言うと、すんなり辞めさせてくれた。
何より親の期待が辛かった。親を喜ばせるためにすることに、夢中でいられるはずがなかったのだ。
その分の時間を、勉強に充てられることになった。
元々通っていた塾では、まあまあ楽しくやっていたと思う。親と違って塾の講師はよく褒めてくれるし、頑張った結果が成績にも表れていた。しかし中学受験に差し迫ったとき、親が提示した中学校は、レベルが高すぎて全く自分に見合っていなかった。
「習い事を全部辞めたんだし、その分勉強の時間が作れるでしょう。あなたには勉強しか取り柄がないんだから」
唯一楽しいと感じていた講師との時間は、苦痛に変わった。
勉強ばかりで友達もほとんどいない公季にとって、家にも学校にも心地が良いと思える場所がなかった。
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