【番外編】ある日の逢瀬 EP12と13の間のはなし

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()()()()()、ちゃんとイかせてあげる」  久しぶりに見る、狂気のような笑顔がそこにはあった。  気が付くと部屋は真っ暗だった。侑生が隣で眠っている。  結局あの後、公季はイかせてもらえなかったことを思い出す。  不完全燃焼感のあるそこが、じわじわ熱を持ち始めた。  侑生が寝ている間に、済ませてしまおう。  公季はそう思って息を殺し、なぜかきちんと穿いている短パンと下着をずり下ろす。  今、ここで侑生が起きたらどうなるのだろう。  浅くなる呼吸を必死で喉の奥に押し込み、快感に身を任せる。  起きないでほしいのに、この行為を見た侑生が自分に浴びせる言葉や表情を想像して、さらに興奮してしまう。  ――我慢できなかったんだ? まだお仕置きが必要なの? ……ねぇ、公季。  蔑むような目で自分を見て、それから彼は何をするんだろう。  それとも、あの日のようにたくさん甘やかしてくれるのだろうか。  起きて、起きないで。相反する気持ちがぶつかり合いながら、溜まっていった欲は手の中に吐き出された。 「――気持ち良かった?」  心臓が跳ね上がる。  起き上がって後処理をしていた公季は、ベッドの方を恐る恐る振り向いた。 「……見てたんですか?」 「最後だけね」 「……」  暗くて顔はよく見えないが、声の冷静さを察するに怒りは収まっているみたいだった。   「せっ、……侑生は、俺が遊んでると思いました?」 「いや? 全く」  ベッドでの張り詰めた雰囲気は完全に消えていて、いつもの会話に戻っている。 「ほんと、恥ずかしいんですけど、……これ自分で付けたんです」 「え、なんでまた」 「……俺も侑生に付けたかったから。……練習してて」  絶対に笑われると思っていたので恥ずかしくて言えなかった。  しかし侑生は笑っている様子はなく、聞こえてきた声も優しげなものだった。 「じゃあ、付けてよ」  ゆっくりとベッドに近付き、仰向けになっている侑生の上に覆い被さる。  肩に手を置き体重をかけ、首元に焦点を定める。  ふと侑生の顔を見ると、暗さに慣れてきたおかげで表情がよく読み取れた。  ――え、照れてる!?  侑生は「見んなよ」と言って、公季の頭を自分の首元に引き寄せる。  公季は小さな印をそこに残した。
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