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『いや、過去のトーク眺めてただけです』
『なんの? 公季のこと好きってやつ?』
彼はエスパーなのだろうか。
驚きの気持ちは心の内にしまい、淡々と文字を打つ。
『そうですよ』
文末に開き直った顔文字を添える。ささやかな強がりに、一つや二つ悪態をつかれるだろうと予想していたが、
『そんなん直接何度でも言ってやるよ』
と意外な返信に手が止まる。
こんなにも愛情表現をしてくれるのに、潜在意識の中にはなぜだか不安が残る。
もし侑生と本当の意味で身体を繋げて、一緒に気持ち良くなることができたら、この不安は払拭されるのだろうか。少なくとも、今の公季にはそれが一番の懸念材料となっていることは確かだ。
『じゃあ、今夜な』
『はい、いつもの時間に行きます』
公季はスマホを閉じ、夢の中の侑生を思い出す。正夢になんかさせないと、脳内に侵略してくる虚像を睨んだ。
帰寮してすぐ、ルームメイトが部活で不在なのを見計らって、夢の中では指の一本も入らなかった場所をゆっくりと慣らしていく。
初めてそこに指を入れた時は、不快感しか得られなかった。しかし今まで時間をかけて慣らしていったおかげで、侑生に挿れられたいと思うくらいには感じられるようになっていた。
問題は、本番でちゃんとスムーズに入るかだ。
侑生はどう考えてもS属性に分類されるが、痛ぶることは絶対にしない。夏が過ぎたからと油断していた体育祭で思いっ切り日焼けしてしまった時も、その痛々しく赤くなった肌を攻めることはしなかった。
「公季が恥ずかしがってるのはすげぇそそるけど、痛がっているのはなぁ……」
そんなことを言っていたのも鮮明に覚えている。少しでも痛がる素振りを見せたら、侑生は萎えてしまうのだろう。
だから、本番までに入念な練習が必要なのだ。
今日は、かなり解せたんじゃないかと思う。こっそりポケットに忍ばせてきたコンドームの出番を心待ちにして、その日の夜、約束通り侑生の部屋を訪れた。
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