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おやすみへ誘う夜のにおい
夜の帳が降りてくる
夢であなたに会うために
寝台の準備を始めましょう
一の衣は夕の薄衣
帳を静かに揺らすのは
ひと足早い夜の風
大きく息を吸い込んで
亜麻の敷布を広げましょう
二の衣、三の衣
黙する宵の明星は
あなたの居場所への道標
拾った星明りを含ませながら
綿紗の掛布を広げましょう
四の衣、五の衣
瞬く星の囁きが
今日の終わりを告げるから
あなたによく似た瞳のうさぎの
大きなぬいぐるみを抱え
敷布と掛布に包まれましょう
最後の帳は胸の内
夜の匂に誘われ
柔らかな闇に身を浸せば
ひとえに静かな奥底で
「おやすみなさい」の声がする
境を失う世界の中で
微笑むあなただけが鮮やか
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