一言に賭ける

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 青年は長い前髪の隙間から強く眉を寄せた。 【黒い森の魔物とのゲームで負ければ生命を失う。だが勝てば大金を得る】シュトゥットガルトに住む友人の言葉が蘇り納得する。 「何故だ? 俺の運は最強なんだ。さっき何をやったんだ!そうか!お前は俺と同じもうこの世の者では無いな!何者だ!?」  己の敗北を認めぬ漆黒の魔物はジリジリと青年の前に詰め寄った。青年は両手を前に突き出し魔物から目を背けたまま応える。 「確かに貴方の運は最強でした」  僅かな青年のに目を光らせた魔物が巨大な身体を屈めて怯える顔を覗き込んだ。 「貴様、何か隠しているな」 「ですから貴方は幸運で僕は不運だった。この世の者じゃないだなんてとんでもない。職業柄の特技というものに助けられた。それだけなんです。黙っていましたが僕の本職は......」  青年は魔物の顔色を伺いながら真実を告げた。 「ただの奇術師(マジシャン)なんです。しかもカードマジック専門の」    胸元から徐に取り出したマジックショーの舞台に立つ青年自身の写真を種明かしをする様に魔物の方に差し出す。 「貴様、奇術師(マジシャン)だったのか!さては今までずっとカードをすり替えていやがったな!このクソッタレが!」  
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