「オン」

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「オン」

「本当はっ・・・私だってあんたみたいになりたかったっ・・・」 夕暮れ時のグラウンド。少しだけしっかりとした目つきになった遥に、真莉愛は嗚咽混じりに訴える。 「あんたみたいに・・・普通に愛されてっ・・・普通に傍にいられてっ・・・そんな風になりたかったっ・・・・・・」 嫉妬と敗北に、哀愁が混じった叫びの中で、真莉愛は地面に向かって泣き続ける。遥もまた、そんな彼女を見て、サァっと涙を流した。 そこは   まさに2人だけの空間だった。 「夏子ちゃんお疲れ様っ!最後のシーンすごく良かった!!」 森川さんは、「あぁ  もう駄目だっ」と、ハンカチで目を覆っている。 「ありがとうございます。」 「監督からも、演技が一層垢抜けたって。何かあった?」 「んーーー、悪役も好きだなって。」 はてなマークが沢山浮かんでいるであろう森川さんを置いて、私は休憩に入る。 『どっちかと言うと遥派だけど、真莉愛のキャラもクセになるんだよねーー』 『あれだけ悪くなれるって、レベル高いよ』 『あのドラマ全員神!』 ・・・・・・あともう少しの間、精一杯真莉愛になろう。 私は、ツインテールを勢いよく縛り直した。
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