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これがおふざけの類ではないという事はすぐに分かることになる。翌日もそのまた翌日も必ず同じ場所で、同じ声を耳にしたからだ。
『どこにいるの……どこ、返事して……なこ』
大人の声ではなく、同年代か中学生あたりの声に思えた。そして不安や寂しさを纏った声色だった。
ややもすれば少しばかり怖く感じたものの……なに変なこと言ってんの何も聞こえないじゃんやめてよ気持ち悪いなぁと一蹴された友人らに相談することは出来ず、結局わたしは無視し続けることになった。
しかし曇天催すある日、母にお使いを頼まれて近くの商店へと出かけることになった。
例によってその場所を、この時一人で通りかかることになるわけだが、サビたトタンが目立つプレハブ小屋の前で、クリーム色のつば広帽と小紋柄の割烹着を召した一人の老婆が立っていることに気付いた。
腰は曲がり、動きはぎこちなくよれっとしている。キャリーカートから缶ジュースを取り出しているところだった。
何をしているのか気になりながらも私は、通り過ぎようとした時だった。老婆に、呼び止められたのだ。
「ちょっとお嬢ちゃん、手伝ってくれんかね」
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