声を聞く

【動機】

　その後老婆はここで起きた一連の出来事に関して、語り部の様に話してくれた。
　以前ここでは交通事故があった。当時十四歳の少女が路で轢き逃げされ、命を落としたのだ。
　後に運転手は捕まったが、危険な運転をしていたわけではなく少女が飛び出したことが原因だったと判明した。なぜ少女は飛び出したのか……結局その理由は分からぬままとなった。
　ところが、イジメられていた大人しい子であったという事が浮き彫りになり、巷ではいじめが原因で自殺をしたと言われるようになる。
　そこで、学校側がイジメの実態把握をできていなかったから招いた非業の死であったと、世間から学校に対する大量のバッシングが始まった。
　しかし老婆はそうでないことを知っていたそうだ。なぜなら少女がこの場所で、野良の子猫の餌やりをしていたことを知っていたからだ。
　少女はとても猫を可愛がっており、猫もまたよくその子に懐いていた。そのネコの名前はナコと言い、臆病な子で車の音もカラスの鳴き声も怖がっていたらしい。
　女の子は家族に内緒でお小遣いで餌を買っては与えていたらしく、何度か話したことがあったそうだ。