気づいてしまった気持ち

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 翌朝、朝食とお弁当の準備をしていると、少し遅れて兄さんが起きてきた。兄さんの目は充血したように赤くなっている。 「遅いよ、兄さん。早く食べないと遅刻するよ」 「わかった」     いつもは明るい兄さんが、その日は目を合わせようとしない。兄さん、もしかして怒ってるの? 「にいさ……」  昨日のことを謝ろうと声を発した時、遮るように兄さんが立ち上がった。 「行ってくる」  兄は朝食を食べ終えると、お弁当をつかみ取り、逃げるように仕事へ行ってしまった。 「兄さん……」  取り残された私はどうしていいのかわからず、キッチンに立ち尽くした。  兄を怒らせてしまったのだろうか?  その日は学校に行っても、兄のことで頭がいっぱいだった。  「今日は兄さんの好物をいっぱい作って、昨夜のことを謝ろう。私が兄さんに甘えすぎてるからダメなんだ」  学校が終わるとスーパーへ直行し、兄さんの好物の唐揚げとポテトサラダを頑張って作った。 「兄さん、遅いな……」  兄はいつも早めに帰ってくる。家に妹がひとりで待っていることを職場の人も知ってるからだ。  いつもの帰宅時間より二時間近く遅い時間になって、兄さんはようやく帰ってきた。 「兄さん、おそ……」  玄関へと走りながら、兄に声をかけようとして、私の声はぴたりと止まってしまった。  玄関にいたのは、兄だけではなかったからだ。 「穂香、おまえに紹介したい人がいるんだ」  兄の後ろから歩み出てきたのは、長い黒髪が美しい大人の女性だった。 「あなたが陽斗さんの妹さんね。こんばんは、初めまして。美鈴(みすず)と申します」 「穂香、俺は美鈴さんと付き合ってるんだ。いずれ結婚したいと思ってる」  兄への気持ちに気付いてしまった翌日、兄から衝撃の告白をされたのだった。
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