王妃の手紙

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 どうです? これでお前もなぜわたくしがヒッタイトの王子を所望したか理解できたのではありませんか?  この縁談がまとまるまでは、アイにもホルエムヘブにも、ましてアメン神官たちにも知られるわけにはいかないのです。エジプト王家にヒッタイトの血を入れるなど、あの者たちには考えもつかないことでしょう。  スッピルリウマ王には、やってくる王子はわたくしが命を賭してお守りします、二つの大国の血を受け継ぐ子をもうけ、両国のさらなる繁栄を、とお伝えしなさい。  そして、無事に子を産み落とした暁には、わたくしは魂となって王子と子を守ると約束しましょう。いいですね。これが嘘偽りでないことを、ほかの誰でもない、お前の口からスッピルリウマ王にお伝え申すのです。  ほほ、すっかり胸のうちを打ち明けてしまって、お前をエジプトに留めておきたくなってしまいました。名残惜しいけれど、お前には重大な任務がありますものね。  さあ、お行きなさい。北へ。ヒッタイトへ。  さようなら、お前のことは決して忘れはしません———  ああ、夜が明ける。  唯一の神アテンよ、最愛の夫トゥトよ。わたくしのただひとつの希望を携えて砂漠を越えるこの青年を守り給え。  この手紙がヒッタイトへ届けられ、我が願いが成就せんことを———……
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