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「ふぅ、もう9時か。昨日のアニメは最高だったな。夜も眠れぬほどに感動した」と一人ニヤケ面で口にしていた。
ひろちゃん、すぐに支度なさい!母が下の階から叫び上がってくる。
あぁ、そうだった。今日は従姉弟である絵里の結婚式だ。従姉弟は一つ上で、街行く人が目を見開く程の美人である。
「あの絵里が結婚か・・・・・・」何とも言えない、寂しいような悔しいようなそんな虚無感を覚えた。
幼少期、従姉弟でありながら一緒にお風呂に入ったり、布団で転がったりしながら仲良くしていた。大にとっては、本物の姉弟のように慕っていた。
「支度しないと。それにしても外に出るの何ヶ月ぶりだろうか・・・・・・」
それもそのはず、大は泣く子も黙る引きこもりニート。ほとんど外界から切り離された世界の住人である。
「早くなさい、絵里ちゃんに迷惑かけるじゃない」と母から追い討ちをかけられた。
「わかった、わかりました。今行くから」と慌てて服を着て階段を駆け降りる。
「頭もヒゲもボサボサじゃない、今すぐ整えてきなさい」とため息をつく母。
「うぃ〜」
さぁ準備万端。冠婚葬祭用のスーツを着て頭、髭を剃り、歯を磨き、見た目はやっと下の下だが外に出る支度が整った。いざ行かん、出陣じゃと胸に抱き家を出る。
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