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「蛍火や、きれいんでごあいますなあ。ひめさま」
そう言えば七月の逢瀬のとき、淤美豆座衛門は遍く続く螺旋階段の、その千段目あたりで私にこう言った。辺りには無数に青白い光を放つ蛍が舞い、私は淤美豆座衛門より3段高いところに立っていた。ちなみに私は姫でも姫様でもないのだが、淤美豆座衛門はいつもきまって私を「姫」と呼ぶ。
「うん。めっちゃ綺麗。しかしこの階段、どこまで続いているんだろう?」
私は上を向き、黒き天井を見上げた。手すりも柱もないこの螺旋階段は、ただただ渦を巻いた段々が永遠と虚空へと続いているように映る。この段を登った先に何があるのか? さらには先まで登りつめたとき、この階段の段数はいくつあるのか?
一段が脛辺りまで高さであることを考えると、恒河沙、阿僧祇、那由他、いや不可思議か。とにかく天よりも高いところまで階段が続いているのは確かだ。
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